たった3つのポイントで売上が安定する!「構造的リピート」という考え方
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皆さんこんにちは。クラウド会計で経営支援を提供する千葉の税理士、中川祐輔です。
毎週火曜日に、経営者なら知っておきたい「売上増加」についての知識を解説しています。
ビジネスの安定を図るうえで重要なことの一つが、既存のお客様が何度も商品・サービスを利用してくれる「リピート率」の確保です。
新規顧客の獲得は広告費や販促費がかさみがちですが、すでに自社に好意を持っている既存顧客に再度購入してもらうほうがコストを低く抑えられる可能性が高いからです。
とはいえ、多くの企業やお店が取り入れている「ポイントカード」や「会員向けイベント」などの従来型の手法だけでは、スタッフの労力や販促費用が膨らむことも少なくありません。
そこで注目したいのが、ビジネスモデルそのものにリピート購入を組み込み、自然な流れで再購入を促す「構造的リピート」という考え方です。
今回はこの「構造的リピート」のメリットや導入のポイントについて詳しく見ていきましょう。
リピート率を上げる2つのアプローチ
まず、リピート率を上げる施策を大きく2つに分けて整理します。
以下に挙げる2つの方法は、どちらもお客様に再度自社のサービス・商品を利用してもらうことを狙う点では同じですが、根本的な仕組みやアプローチが異なります。
1. 従来型のリピート施策
リピート率を上げる施策として、世間的によく見られるのが以下のような手法です。
- ポイントカードの導入
来店ごとにポイントを貯めてもらい、一定数がたまったら割引や特典を受けられるしくみ。スーパーやコンビニ、飲食店など幅広い業種で利用されています。 - 会員向けイベントの開催
会員登録をした方だけが参加できるイベントを開き、特別感やコミュニティ感を提供することでリピートを促進する方法。ファン化を促す効果も期待できます。 - クーポン配布
来店ごとにクーポンや値引き券を渡し、次回購入時の利用を促す。直接的な値引き効果があるため、即効性の高い方法といえます。 - メールマガジンの配信
新商品やセール情報を定期的に配信し、興味を持ってもらうことでリピート購入を促す方法。既存顧客に対して継続的にアプローチできます。
これらは比較的導入しやすい反面、クーポンの印刷・配布やメールマガジンの作成・配信といった「人的コスト」が必要になる場合も多いです。
また、運営側が頻繁にアイデアを出し、施策を回す必要があるため、効果が担当スタッフのスキルやモチベーションに左右されやすい側面があります。
2. 構造的リピート
もう一つのアプローチとして、ビジネスモデルそのものにリピートを組み込むという考え方があります。
これが「構造的リピート」です。以下の特徴があります。
- ビジネスモデルに組み込まれた仕組み
ポイントカードのように運営側で繰り返し施策を打つのではなく、商品・サービスの構造そのものが「再購入・再利用」を前提とした設計になっている。 - 半自動的にリピートが生まれる設計
一度利用を始めると、追加のアクションなしでも定期的に収益が発生する場合が多い。例としては定期購入型のサービスなどが挙げられます。 - 人的コストを最小限に抑えられる
担当者のフォローがなくても自然にリピートが続くため、販促コストが抑えられやすい。
構造的リピートを導入できれば、次に説明するように大きなメリットが得られ、安定した売上を確保できる可能性が高まります。
構造的リピートのメリット
それでは、構造的リピートを自社のビジネスに導入することで、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
ここでは3つのメリットに分けて解説します。
1. 人的コストの削減
構造的リピートを実現できると、顧客フォローやイベント企画などに費やす人的リソースを抑えられるようになります。
たとえば従来型の施策であるポイントカードの更新作業やクーポン配布などは、都度の企画立案やスタッフによる対応が必要です。
一方、ビジネスモデル自体にリピートの仕組みを組み込んでいれば、ある程度自動的に売上が積み重なるため、販促のための人件費や労力を大幅に削減することが可能です。
2. 安定した売上の確保
リピート率が低いと、担当スタッフが定期的にキャンペーンを仕掛けるなどしてお客様に再度購入してもらう「きっかけ作り」を行わなければなりません。
しかし、担当者の異動や退職、あるいは販促予算の増減があると、こうした取り組みが停滞し、売上にも影響が出てしまいます。
構造的リピートはビジネスモデルそのものに継続購入の仕組みが組み込まれているため、施策を回す担当者が変わっても影響が少なく、事業としての安定度が高まります。
売上を一定水準で維持しやすくなるのは、長期的な経営を考える上でも大きなメリットです。
3. 顧客の利便性向上
従来型のリピート施策では、「ポイントカードを持ち歩くのが面倒」「クーポンが必要な時に手元にない」といった顧客側の不便が生じる可能性があります。
一方で、構造的リピートの仕組みを整備すると、お客様が特別に何かを意識しなくても継続利用ができるようになります。
たとえば「定期的に商品が自動で送られてくる」ような形になっていれば、注文を忘れることなく商品を手に入れられるため、顧客満足度を高める効果も期待できます。
結果として、お客様と企業の双方にメリットがある構造を作り上げられるのです。
構造的リピートが特に効果を発揮する業態
「構造的リピート」という考え方はあらゆる業態に適用し得ますが、特に導入効果が高いのはどのような業界でしょうか。
ここでは、代表的な2つの特徴的な業態を挙げ、理由を解説します。
1. 顧客獲得コストが高い業界
新規集客にかかる広告費が高い一方で、潜在顧客層が限られていたり、他社との競合が激しかったりする業界では、一度獲得した顧客を大切に育てることがとても重要になります。
たとえば高額な広告を打たなければ認知度が広がりにくい業種などは、一度来店したお客様に継続的に利用してもらう仕組みを作ることで、広告費の効率を改善しやすくなります。
構造的リピートを導入すれば、新規集客に費やしたコストを複数回の購入で回収しやすくなり、安定した利益を確保することにつながります。
2. 単価の低い業界
ラーメン店や雑貨店など、1回あたりの購入単価が低い業態では、集客のために高額な広告費をかけ続けるのが難しい場合があります。
単価が低いと、広告費の回収にも時間がかかってしまうからです。こうした業種では、「継続して来店してもらう」仕組みが重要となります。
リピーターを効率よく増やすことで、客単価以上の長期的な売上を見込むことができ、結果として広告費の投資効率を高めることができます。
構造的リピートが実現すれば、毎回の販促に頼らなくても一定の売上が積み重なるサイクルを作りやすくなるでしょう。
構造的リピート導入のポイント
では、実際に構造的リピートを導入する際には、どのような点に注意すればよいのでしょうか。
最後に、導入時に押さえておきたい3つのポイントを解説します。
1. シンプルな仕組みづくり
あまりにも複雑な仕組みだと、導入や運用に手間がかかってしまい、結果的にコストが増大してしまいます。
「最初の契約時に申し込むだけで自然にリピートが生まれる」など、できるだけシンプルな形で顧客が利用しやすく、企業側も運用しやすい仕組みを考えることが大切です。
従来型のリピート施策に比べて、余計な業務プロセスやスタッフの負担がかからないかどうかを検討し、運営がスムーズに進む設計をめざしましょう。
2. 顧客メリットの明確化
ビジネスを行う側の都合だけでなく、「お客様にとってどんなメリットがあるのか」をしっかり考えることも重要です。
例えば、商品を継続的に利用することで得られる利点や、定期的に購入することによって得られる特典など、顧客が喜ぶ要素が明確になっているほど、リピートの定着率は上がります。
構造的リピートは企業側だけでなく、顧客満足度を同時に高めるデザインが求められます。
3. 導入コストの検討
新しい仕組みを導入するにあたっては、システム構築やスタッフ教育など初期投資が必要になる場合があります。
導入後の維持費も考慮に入れたうえで、「期待できる売上増加」と「導入・運用コスト」を比較検討しましょう。
構造的リピートが実現すれば、将来的に人的コストの削減や売上の安定化が見込めるため、初期コストが高くても長期的には十分ペイできる可能性があります。
事前のシミュレーションと試験的な導入で効果を検証するのがおすすめです。
まとめ
構造的リピートは、人的コストを抑えながら安定的な売上を確保できる手法として、近年注目を集めています。
従来型のリピート施策のように、都度スタッフが販促活動を行わなくても自然にリピートを生むしくみは、担当者の入れ替わりなどにも左右されにくい点が大きなメリットです。
ただし、すべての業態に当てはまるわけではなく、自社のビジネスモデルや顧客単価、顧客特性などを考慮しながら導入の可否を判断する必要があります。導入時には、以下の点を再確認しましょう。
- 仕組みがシンプルか
企業側の運用や顧客の利用に過度の負担がかかっていないかを確認する。 - 顧客にとってのメリットが明確か
リピートすることの魅力を示せないと、結局のところ利用が続かない可能性がある。 - 導入・運用コストと期待効果のバランスはどうか
システム整備などの初期費用をかけても、長期的な売上や利益向上が見込めるかを慎重に検討する。
自社の特徴や顧客の属性をしっかりと分析したうえで、構造的リピートを取り入れるかどうかを判断することが重要です。
もし導入がうまくハマれば、安定的な売上基盤を築く大きな一歩となるでしょう。