銀行融資の攻略法:資金調達の決め手となる「保全」について
皆さんこんにちは。クラウド会計で経営支援を提供する千葉の税理士、中川祐輔です。
毎週金曜日に、経営者なら知っておきたい「銀行融資」についての知識を解説しています。
本記事では、銀行融資の核心である「保全」について詳しく解説し、効果的な資金調達の方法を探ります。
銀行が重視する「保全」とは
銀行業界で使われる「保全」という言葉は、一般的な意味とは異なります。
建設業では安全管理、生命保険会社ではアフターメンテナンスを指す場合がありますが、銀行融資における「保全」は「担保」を意味します。
銀行が融資を行う際、返済の確実性を担保するために「保全」を重視します。これは主に「人的担保」と「物的担保」の2種類に分けられます。
1. 人的担保
人的担保は、個人や法人が保証人となって融資の返済を約束するものです。主に以下の種類があります:
- 連帯保証人(多くの場合、経営者本人)
- 信用保証協会の保証
- ノンバンクなどの保証会社による保証
経営者が連帯保証人になることは一般的ですが、近年では経営者保証に依存しない融資も増えています。
2. 物的担保
物的担保は、融資の返済が滞った場合に換金できる資産を指します。主な例は以下の通りです:
- 不動産(土地・建物)
- 機械設備(ただし、動産のため優先度は低い)
- 売掛金
- 商品在庫
不動産は最も一般的な物的担保ですが、その評価額や換金性によって担保としての価値が変わります。
「保全不足」の意味と対策
銀行から「保全不足」と言われた場合、それは単に担保が足りないという意味ではありません。
銀行は主に以下の点を総合的に判断しています:
- 返済財源(売上高・利益)
- 担保の価値
返済財源が十分であれば、担保が不足していても融資が可能な場合があります。
逆に、担保があっても返済財源が不足していれば融資が困難になることもあります。
「保全不足」への対策としては、以下のような方法が考えられます:
- 事業計画を見直し、返済財源の確保を明確にする
- 追加の担保を提供する
- 保証人を追加する
- 信用保証協会の保証を利用する
銀行融資の審査ポイント
銀行は融資を行う際、企業の総合的な評価を行います。主に以下の3点で企業を評価します:
- 会社の業績
- 担保の状況
- 経営者個人の資産背景
特に3番目の「個人の資産背景」は、多くの経営者が軽視しがちですが、実は重要な審査ポイントです。
銀行は経営者の個人資産を、企業の信用力を補完するものとして見ています。
個人の資産背景を効果的に伝える
経営者の個人資産は、融資の審査において重要な役割を果たします。以下のようなものが対象となります:
- 預金
- 不動産
- 生命保険の解約返戻金
- 上場企業の株式
- 家族名義の資産
これらの資産を適切に開示することで、銀行に安心感を与え、融資の可能性を高めることができます。
ただし、単に資産額を伝えるだけでなく、その資産の性質や流動性についても説明することが重要です。
資産背景の開示に関する誤解
「資産を隠せなくなる」という理由で個人資産の開示を躊躇する経営者もいますが、これは適切ではありません。
以下の理由から、むしろ積極的に開示することをお勧めします:
- 実際の再生局面では資産隠しは困難
- 担保提供は最終手段として残しておける
- 小口での借入を避けられる可能性がある
- 銀行との信頼関係構築に寄与する
資産を適切に開示することで、銀行との信頼関係が深まり、より有利な条件での融資を受けられる可能性が高まります。
保証協会付き融資の真実
銀行が保証協会付き融資を勧める理由は、銀行自身のメリットが大きいからです。主なメリットは以下の通りです:
- 銀行の資産から融資を除外できる
- 自己資本比率が向上する
- 貸し倒れリスクを軽減できる
つまり、保証協会付き融資は「銀行のための保証協会」と言えるでしょう。
ただし、企業にとってもメリットがある場合もあるため、状況に応じて検討する価値はあります。
まとめ:効果的な資金調達のために
銀行融資を成功させるためには、単に担保を用意するだけでなく、企業の財務状況の改善や経営者個人の信用力向上など、総合的なアプローチが必要です。
以下のポイントを押さえることで、効果的な資金調達が可能になります:
- 返済財源(売上・利益)の改善に注力する
- 適切な担保を準備する
- 経営者個人の資産背景を効果的に開示する
- 銀行との信頼関係を構築する
- 保証協会付き融資のメリット・デメリットを理解する
これらのポイントを意識しながら、自社の状況に合わせた最適な資金調達戦略を立てていきましょう。
銀行融資は単なる資金の借り入れではなく、銀行との長期的な関係構築の機会でもあります。
透明性を持って情報を開示し、誠実なコミュニケーションを心がけることで、より強固な財務基盤を築くことができるでしょう。