銀行融資の攻略法:取引銀行を選ぶ際の重要な4つのポイント
皆さんこんにちは。クラウド会計で経営支援を提供する千葉の税理士、中川祐輔です。
毎週金曜日に、経営者なら知っておきたい「銀行融資」についての知識を解説しています。
近年、経済環境が大きく変化する中、中小企業にとって適切な銀行との関係構築は経営の要となっています。
本記事では、企業の成長に欠かせない銀行融資について、銀行の選定から具体的な対策まで詳しく解説します。
銀行融資を取り巻く現状
変化する金融環境
かつての右肩上がりの経済成長期とは異なり、現在の銀行は自らの生き残りをかけた競争を行っています。
多くの銀行で資金が余剰状態となっており、融資に積極的な姿勢を見せています。
この状況は特に都市部において顕著であり、企業にとっては融資を受けやすい環境が整っているといえます。
地域による金融環境の違い
金融環境は地域によって大きく異なります。特に競争の激しい関東圏、中京圏、関西圏では、企業にとって有利な条件での融資を受けやすい状況にあります。
中でも名古屋圏は「名古屋金利」と呼ばれる低金利で知られ、東京よりも有利な条件を提示することも珍しくありません。
大阪圏がこれに続き、福岡県などの地方中核都市でも、都市部を中心に多様な金融機関が進出し、活発な融資活動を展開しています。
効果的な銀行選択の戦略
1.戦略的思考の重要性
銀行との取引は、受動的なものではなく、経営者自身が戦略的に選択していく姿勢が重要です。この考え方は、多くの経営者にとって新しい発想かもしれません。
しかし、上場企業に成長している企業の多くは、この戦略的選択を実践しています。これは偶然ではなく、経営者の意識的な取り組みの結果といえます。
2.企業規模に応じた銀行選択
企業の規模や成長段階によって、適切な取引銀行は異なります。売上規模が5億円以下の企業では、信用金庫をメインバンクとすることが適切です。
5億円から30億円規模の企業では地方銀行との取引が推奨され、30億円を超える規模になるとメガバンクの活用を検討する段階となります。
3.銀行評価の重要指標
銀行を評価する際には、預金残高、貸金残高、預貸率、自己資本比率、不良債権比率という5つの指標に注目する必要があります。
特に預貸率については、メガバンクが約80%、地方銀行が60~70%、信用金庫が50~60%程度となっています。
自己資本比率は15%以上が望ましく、8%以下の金融機関との取引は慎重に検討する必要があります。
4.越境融資の活用
近年、注目すべき動きとして、地方銀行の都市部への進出があります。
例えば、群馬銀行や足利銀行、常陽銀行などが首都圏で、また三重銀行や岐阜銀行が名古屋圏で積極的な融資活動を展開しています。
これらの銀行は、本拠地での融資機会が限られているため、大都市圏での融資に積極的です。
重要ポイントのまとめ
■ 戦略的選択の意識
銀行取引は受動的なものではなく、経営者自らが戦略的に選択すべき重要な経営判断です。
■ 企業規模と銀行の適合性
売上規模によって適切な取引銀行が異なることを認識し、自社の成長段階に合わせた選択が必要です。
■ 銀行の健全性チェック
預金残高、貸金残高、預貸率、自己資本比率、不良債権比率の5つの指標を確認し、取引銀行の健全性を評価しましょう。
■ 地域特性の活用
地方銀行の越境融資など、地域を超えた融資機会を積極的に活用することで、より有利な条件での資金調達が可能となります。
おわりに
銀行との関係構築は、一朝一夕には実現できないものです。
しかし、本記事でご紹介した視点を持ち、戦略的に取り組むことで、必ず道は開けていきます。
特に現在の金融環境は、企業にとって融資を受けやすい状況にあります。
この機会を活かすためにも、まずは自社の状況を客観的に分析し、どのような金融機関との取引が最適かを見極めることから始めてください。
また、銀行との関係は、単なる資金の貸し借りにとどまりません。
良好な関係を築くことで、業界動向や経営に関する有益な情報提供を受けられたり、取引先の紹介を受けたりする機会も生まれます。
つまり、銀行は重要なビジネスパートナーとなり得るのです。
最後に、経営環境が急速に変化する今日において、柔軟な資金調達手段を確保することは、企業の成長戦略を実現する上で極めて重要です。
本記事が、皆様の経営判断の一助となり、企業の持続的な成長につながれば幸いです。