税務調査で狙われる!外注費の判定基準 ~5つの基本ポイントと実例~
皆さんこんにちは。クラウド会計で経営支援を提供する千葉の税理士、中川祐輔です。
毎週月曜日に、経営者なら知っておきたい「税務調査」についての知識を解説しています。
昨今、「働き方改革」の流れの中でフリーランスや個人事業主との取引が増加していますが、税務調査ではこうした外注費の処理が重点的にチェックされています。
私が担当した税務調査でも、「外注費として処理すべきか、給与として源泉徴収すべきか」は、必ず確認する重要項目でした。
実際の税務調査では、一見問題なさそうな外注費の処理が覆されて給与認定を受け、源泉所得税の追徴課税を受けるケースが少なくありません。
今回は、税務調査で実際に使用される判断基準と、経営者の方が押さえておくべきポイントについてお伝えします。
税務調査官が見る5つの判断基準
税務調査の現場で、外注費と給与を区分する際の基本となるのが、消費税法の基本通達です。
調査官は以下の5つの要素を総合的に判断して、外注費(報酬)か給与かを決定します。
- 【代替性の有無】
- 外注費:他の人や会社に替えることができる
- 給与:特定の個人しかできない
税務調査では特に、実際に代替要員を使用した実績があるかを確認されます。
「代替可能」と主張するなら、過去に実際に代替者が業務を行った記録や、一時的に別の担当者が対応した証跡を残しておくことが有効です。
- 【指揮監督の有無】
- 外注費:発注者からの指揮監督を受けない
- 給与:指揮監督を受ける
調査官は特にタイムカードの有無や業務指示の方法を重点的にチェックします。
日々の業務指示をメールで行っている場合、そのメールの内容から指揮監督関係が読み取れるため要注意です。
- 【報酬請求権の有無】
- 外注費:成果物の引渡し後に請求可能
- 給与:役務提供期間に応じて請求可能
請求書の形式や支払時期が調査の重要なポイントとなります。
特に毎月同じ金額を同じ時期に支払っている場合、給与として認定されるリスクが高まります。
- 【材料の負担】
- 外注費:自己負担が基本
- 給与:発注者から提供される
材料費の負担関係を明確に示す証憑類の保管が重要です。
外注先が自己負担している場合は、その仕入れ請求書なども合わせて保管しておくことをお勧めします。
- 【作業用具の負担】
- 外注費:自己負担が基本
- 給与:発注者から提供される
特にパソコンなどの高額機器の所有関係が注目されます。
会社のPCを貸与している場合は、有償貸与として適切な賃料を設定することで、給与認定のリスクを軽減できます。
税務調査で問題になりやすい具体例
フリーランスのシステムエンジニアとの取引を例に、税務調査での判断の分かれ目を見てみましょう。
■外注費として認められやすいケース
- 在宅での作業が中心で、出社の要否は本人判断
- 使用するPCやソフトウェアは本人が用意
- 作業の進め方は本人に一任
- 同様の業務を他社でも請け負っている
これらの状況を客観的に示す証拠の保管が重要です。
特に在宅勤務の場合、成果物の納品書や進捗報告書など、業務の実態を示す書類をしっかりと残しておくことで、外注費としての適切性を主張できます。
■税務調査で給与認定されるリスクが高いケース
- 毎日決まった時間の出社を求められる
- 会社のPCや備品を使用
- 作業手順を細かく指示される
- 他社との取引が実質的に制限されている
これらの要素が重なると、ほぼ確実に給与認定の対象となります。
特に出社時間の管理や細かい業務指示は、雇用関係の存在を強く疑わせる要因となるため、外注契約の場合は極力避けるべきポイントです。
税務調査に備えて経営者が押さえておくべきポイント
- 契約書の作成
- 業務内容や条件を明確に記載
- 特に指揮命令系統を明確化
- 成果物と報酬の関係を具体的に明記
契約書は税務調査の際の最重要書類です。
業務の範囲や報酬の決定方法、納期の設定など、請負契約としての特徴を明確に示す内容を含めることが重要です。
形式的な契約書ではなく、実態に即した具体的な内容を記載することで、外注費としての正当性を主張する有力な証拠となります。
- 報酬の支払方法
- 給与支給日と分けて設定
- 成果物との紐付けを明確に
- 請求書の入手と保管を徹底
支払いの時期や方法は、税務調査で特に注目される部分です。
毎月の給与支給日と同じタイミングでの支払いは避け、成果物の検収後の支払いとするなど、請負契約としての特徴を明確にした支払体制を整えることが重要です。
- 業務管理方法
- 過度な拘束を避ける
- 裁量権の確保
- 業務の進捗管理方法を工夫
業務管理の方法は、雇用関係の有無を判断する重要な要素です。
必要以上に細かい指示や日報の提出要請は避け、成果物の品質や納期を中心とした管理方法を採用することで、請負契約としての実態を維持することができます。
まとめ
外注費と給与の区分は、形式よりも実態が重視されます。
税務調査での指摘を防ぐために、以下の3点を日々の業務で意識していきましょう。
- 5つの判断基準に基づいた取引の見直し
- 契約書や請求書など、証拠書類の適切な整備
- 実態と書類の整合性チェック
次回は、実際の税務調査でどのような観点から外注費が否認されているのか、調査官の思考回路に沿って解説いたします。