業種別に見る税務調査での給与認定リスク ~現場からの実践的対策~

皆さんこんにちは。クラウド会計で経営支援を提供する千葉の税理士、中川祐輔です。

毎週月曜日に、経営者なら知っておきたい「税務調査」についての知識を解説しています。

前回は、契約形態による判断基準の違いについて解説しました。

最終回となる今回は、業種ごとの特徴と税務調査での具体的な判断基準についてご説明します。

私が実際に経験した事例を交えながら、実践的な対策をお伝えします。

1. 保険外交員の場合

保険外交員の報酬は、固定給部分と歩合給部分が組み合わさっているケースが一般的です。

税務調査では、この二つの性質の違いが重要なポイントとなります。

対策としては:

  • 固定給と歩合給を明確に区分する
  • 歩合給の計算方法を文書化する
  • 営業経費の負担関係を明確にする
  • 他社契約の制限がない旨を明記する

保険外交員の場合、歩合給部分は契約の獲得という成果に対する報酬として、外注費と認められやすい特徴があります。

2. 建設業の一人親方

建設現場での一人親方の働き方は、実態としては従業員に近い場合も多くあります。

しかし、請負契約としての特徴を明確にすることで、外注費として認められる余地は十分にあります。

対策としては:

  • 工事単位での請負契約を締結する
  • 作業員の手配は一人親方の責任とする
  • 道具類は原則として持ち込みとする
  • 工事完了時の検収を徹底する

特に建設業の場合、作業員の指揮命令系統を明確にすることが重要です。

3. 士業(税理士・弁護士等)の場合

士業との契約は、通常は委任契約として締結されます。

しかし、顧問先企業の役員に就任するケースなど、契約関係が複雑になることも少なくありません。

対策としては:

  • 顧問契約と役員報酬を明確に区分する
  • 業務内容ごとに報酬を設定する
  • 成功報酬の基準を明確化する
  • 複数の契約書を適切に管理する

士業の場合、専門家としての業務と役員としての業務を明確に区分することが重要です。

4. サービス業(接客業等)の場合

接客業、特に飲食店等での従業員とフリーランスの区分は、実務上最も判断が難しい分野の一つです。税務調査でも特に慎重な確認が行われます。

対策としては:

  • 出勤時間の自由度を確保する
  • 売上管理責任の所在を明確にする
  • 制服等の負担関係を明確にする
  • 接客方法の裁量権を認める

特に接客業の場合、勤務時間の拘束性が重要な判断要素となります。

まとめ

業種によって外注契約の実態は大きく異なりますが、以下の点は共通の重要ポイントとなります。

  • 業界の商慣習を踏まえた契約設計を行う
  • 実態に即した管理体制を整備する
  • 定期的な見直しと是正を実施する

今回の連載を通じて、外注費の税務調査対策についての基本的な考え方をご理解いただけたのではないでしょうか。

重要なのは、形式と実態の一致を図りながら、業務の実態に合った適切な契約関係を構築することです。

早めの対策で、税務調査でのリスクを最小限に抑えていただければ幸いです。

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