生産性向上の本質 – 時間短縮より収益力向上を重視する理由
皆さんこんにちは。クラウド会計で経営支援を提供する千葉の税理士、中川祐輔です。
毎週木曜日に、経営者なら知っておきたい「業務効率」についての知識を解説しています。
「時間がない」「もっと効率化したい」--こんな悩みを持つ経営者は多いのではないでしょうか。
しかし、単純な時間短縮や効率化だけを追求しても、本当の意味での生産性向上は実現できません。
100社以上のお客様にコンサルティングを提供してきた経験から、今回は生産性向上の本質についてお伝えします。
生産性向上とは何か
「生産性向上」と言えば、多くの方はまず時間短縮を考えます。確かにツールやスケジューリングの工夫は重要です。
しかし、本質的な生産性向上とは、時間あたりの稼ぎを最大化することです。これは単なる時間効率化とは異なります。
時間あたりの収益を上げるために最も重要なのは、顧客満足度を高めることです。そして、その顧客満足度は以下の方程式で表されます:
顧客満足度 = クオリティ × スピード
品質とスピードのバランス
品質(クオリティ)は一朝一夕には上がりません。しかし、レスポンスの速さ(スピード)は誰でも改善できます。
例えば、お客様からの問い合わせに対して:
- 極力早く回答する
- 途中経過でも一報入れる
- 最終的な品質は落とさない
このような対応を心がけることで、「仕事が早い」という評価を得ることができます。
パーキンソンの法則がもたらす罠
特に税理士事務所など、繁忙期と閑散期の差が大きいビジネスでは要注意です。
閑散期に余裕があると、パーキンソンの法則により不必要な業務が増えていきがちです。
この法則が働くと、以下のような悪循環に陥りやすくなります:
- 繁忙期は物量で対応
- 閑散期になると暇を持て余す
- 新たな業務を作り出してしまう
- 次の繁忙期にはさらに業務量が増加
一度この循環が始まると、年々業務量だけが膨らんでいき、本来注力すべき高収益業務にリソースを割けなくなってしまいます。
この悪循環を断ち切るために、私が特に効果的だと考える対策をご紹介します:
- 閑散期の戦略的活用
- 繁忙期の業務を前倒しで実施
- 次期に向けた準備作業の実施
- 教育訓練や業務改善の実施
- 週休3日制の導入検討
- 閑散期の疑似繁忙期化
- 無駄な業務の発生防止
- バッファー時間の確保
これらの対策は一見すると大胆に思えるかもしれません。
しかし、実際に導入した企業では、業務の質が向上し、結果として顧客満足度アップにつながっているケースが多く見られます。
期日からの逆算は危険
「締切から逆算して計画を立てる」という方法は、一見合理的に見えます。しかし、これには大きな落とし穴があります:
- 予期せぬ事態への対応困難
- 家族の急病
- 緊急の割り込み業務
- システムトラブル
- 顧客満足度の低下リスク
- 期限ギリギリの納品
- 手直しの時間が確保できない
- 中間報告が疎かになる
特に深刻なのは、予期せぬ事態が発生した際の対応です。
例えば、子供の急な発熱で1日仕事ができなくなった場合、逆算方式では取り返しがつかなくなってしまいます。
むしろ重要なのは、前倒しの発想です。私の事務所では、以下のような取り組みを実践しています:
- セミナー資料は数ヶ月前から準備
- 年末年始の挨拶文は閑散期に作成
- 定期的な面談は3ヶ月先まで予定を確保
このアプローチにより、急な事態が発生しても余裕を持って対応でき、結果として顧客満足度の向上にもつながっています。
明日からできる具体的な一歩
理想と現実のギャップに悩む経営者も多いでしょう。
しかし、いきなり全てを変える必要はありません。まずは以下の取り組みから始めてみましょう:
- 受注したら即座に予定を入れる
- 3ヶ月先、6ヶ月先の予定も確定
- 移動時間も含めた余裕を持った設定
- 類似業務はまとめて効率化
この習慣を身につけるだけでも、大きな変化が生まれます。
例えば、ある経営者は予定の前倒し管理を始めてから、移動時間が月間で20%削減できたと報告しています。
- レスポンスの改善
- メール返信の迅速化
- 中間報告の徹底
- 状況説明の明確化
スピーディーなレスポンスは、それだけで顧客満足度を大きく向上させます。
品質を落とさずにスピードアップするコツは、小まめな中間報告にあります。
- 前倒し作業の習慣化
- 確実に実施する業務の早期着手
- 空き時間の戦略的活用
- バッファーの確保
これらの施策は、一度習慣化してしまえば自然と身につきます。
最初は少し負担に感じるかもしれませんが、長期的に見ればワークライフバランスの改善にもつながります。
まとめ:生産性向上は収益力向上から
時間短縮や効率化は手段であって目的ではありません。
時間あたりの収益を最大化し、それによって得られた余裕を次の成長のために投資する。この好循環を作ることが、真の生産性向上につながります。
次回は、この考え方に基づいた具体的なツール活用法、特にビジネスメールの改革について詳しくご紹介していきます。