中小企業の業務効率アップ!5つの税金納付方法を徹底比較

皆さんこんにちは。クラウド会計で経営支援を提供する千葉の税理士、中川祐輔です。

毎週木曜日に、経営者なら知っておきたい「業務効率」についての知識を解説しています。

近年は税金の支払い方法が大きく多様化し、ネットバンキングやクレジットカード、さらにスマホアプリを活用して納税できるようになりました。

とはいえ、「どの方法が自社に合っているのか」「メリットとデメリットは何か」といった疑問や不安もあることでしょう。

そこで本記事では、限られたリソースで会社を運営する中小企業の経営者向けに、最適な税金支払い方法を選ぶためのポイントを、わかりやすく解説します。

税金支払い方法は大きく5つ

税金を支払うための方法には、以下の5種類が存在します。

昔から使われてきた現金納付だけでなく、オンラインを活用した納付手段も増えているため、自社の業務スタイルや年間納税額に合わせて、柔軟に選択することが可能です。

  • 現金納付
  • ダイレクト納付
  • ペイジー(Pay-easy)
  • クレジットカード
  • スマホアプリ

以下では、それぞれの方法についてメリット・デメリットを詳しく紹介します。

新しい手段を導入する際には、事前準備や利用可能な金融機関の確認が必要になる場合もありますので、導入ステップのイメージもしながら読み進めてみてください。

現金納付:昔ながらの方法だが、時間的コストに注意

最も伝統的な納付方法である「現金納付」は、金融機関や税務署の窓口に直接出向き、納付書と現金を提出するスタイルです。

多くの企業で現在も利用されていますが、頻繁な納税が必要な中小企業ほど「時間的コスト」が目立つことも事実です。

  • メリット
    納付書と現金を持参するだけなので特別な準備がいらず、手続きが非常にシンプルです。また、窓口で直接支払うため、領収書がその場で手に入る安心感があります。さらに、手数料は発生しませんので、費用面では非常にリーズナブルです。
  • デメリット
    最大の欠点は、金融機関や税務署の営業時間に合わせて行動しなければならない点です。しかも、窓口で並ぶ時間や移動時間がかかるため、経営者やスタッフの貴重な業務時間を削ってしまいます。また、高額な現金を持ち歩くリスクもあり、セキュリティ面でも注意が必要です。

現金納付は「手数料がかからない」うえに「慣れている」という安心感もありますが、納税の頻度が高い企業ほど、時間や労力のロスが無視できなくなります。

特に源泉所得税や消費税など、納税回数が多い税目を扱う場合は、時間的な機会損失の大きさを考慮しておきましょう。

ダイレクト納付:準備は必要だが、手数料無料のオンライン納付

「ダイレクト納付」は、e-TaxやeLTAXといったオンラインプラットフォームを介して、事前登録した銀行口座から直接納税できる方法です。

確定申告をオンラインで行っている場合、そのまま自宅やオフィスから24時間いつでも納税手続きを完結できます。

  • メリット
    24時間いつでもインターネットから手続きできるため、窓口に出向く必要がありません。納付書も不要で、手数料も基本的にかからないのが嬉しいポイントです。また、納税証明書への反映が数日以内と比較的早いので、後日「証明書がすぐ必要になった」という場合にも対応しやすいメリットがあります。
  • デメリット
    e-TaxやeLTAXの利用開始手続きを行い、「ダイレクト納付利用届出書」を提出するなど、あらかじめ必要となる準備が多い点です。また、対応している金融機関の口座でなければ利用できず、紙の領収書も発行されません。電子的に納付を完了したという通知が届くため、これをきちんと保存管理しておく必要があります。

もし「オンライン申告をまだ導入していない」という場合は、導入までのハードルをどうクリアするかが課題になります。

しかし一度仕組みを整えてしまえば、納付書をやり取りするわずらわしさや時間的ロスを大きく削減できるでしょう。

ペイジー(Pay-easy):ATMやネットバンキングを活用して時間を有効に

「ペイジー(Pay-easy)」は、納付書に記載されている番号を使って、金融機関のATMやインターネットバンキングから納付できる方法です。

すでに銀行口座を持ち、ネットバンキングを利用しているならば、導入は比較的スムーズでしょう。

  • メリット
    ATMやネットバンキングは、多くの場合24時間利用可能なため、夜間や早朝などにも手続きができます。また、ペイジー対応マークがついている納付書さえあれば、どこの対応ATMでも支払えるので、出張時にも便利です。手数料は原則無料(ATMの時間外利用手数料は金融機関による)である点も経費面では助かります。
  • デメリット
    ペイジーマークがない納付書は利用できず、領収書も発行されません。また、納税証明書への反映に数日かかるため、車検や不動産取引など「すぐに納税証明書が必要」というケースでは時間に余裕をもって利用する必要があります。

日常的にネットバンキングを活用している企業であれば、導入のハードルは高くありません。

ただし、納付書の種類によってはペイジーを利用できない場合もあるので、納付書をチェックしておくことが大切です。

クレジットカード納付:ポイント還元の魅力と手数料のバランス

「クレジットカード納付」は、国税クレジットカードお支払サイトや地方税お支払サイトを使い、VisaやMastercard、JCBなどの主要カードで税金を支払う方法です。

比較的新しい仕組みですが、特にポイント還元を狙いたい企業にとっては大きな魅力となっています。

  • メリット
    カードの利用額に応じてポイントが貯まるため、支払った税金を少しでも「お得」に変えられる利点があります。年会費や特典内容はカードによって違いますが、高還元率カードなら還元率1%以上になることも珍しくありません。また、分割払いやリボ払いを選択できる場合もあるため、資金繰りが厳しいタイミングには選択肢が広がります。もちろんオンラインで手続き可能なので、24時間いつでも支払いができるのもメリットです。
  • デメリット
    最大のデメリットは、納付金額に応じた「決済手数料」がかかる点です。例えば、三井住友カードでは、1円~1万円で40円、以降1万円ごとに手数料が加算される仕組みになっています。さらに、領収書は発行されないため、電子領収書やカードの利用履歴を必ず保存しなければなりません。加えて、納税証明書への反映に1週間程度かかる場合があるため、急ぎの場合は注意が必要です。

クレジットカード納付を選ぶ際は、「決済手数料」と「ポイント還元率」の関係をしっかり比較してください。

還元率1.0%のカードで100万円を納付すれば1万円分のポイントが付与される一方、決済手数料が1.1%かかれば1万1千円が手数料として必要になり、1,000円の赤字となるため、あまりメリットはありません。

逆に還元率1.5%のカードなら1万5千円分のポイントがつくので、差し引きでプラスを得られる可能性があります。納税額が高い企業ほど、この差は大きくなるでしょう。

スマホアプリ納付:キャッシュレス社会に合わせた新時代の納税方法

バーコードやQRコードをスマホカメラで読み取って納税できる「スマホアプリ納付」は、PayPayやLINE Pay、au PAYなどが普及するなかで急速に注目されている方法です。

気軽に納税できる利点がある反面、注意すべき点もいくつかあります。

  • メリット
    スマホ一台あれば、24時間いつでも・どこでも納税手続きが完了します。バーコードやQRコードを読み取るだけで操作が簡単ですし、納付金額によっては手数料無料で利用できる場合も多いのが利点です。また、導入にあたって特別な届け出がいらないことや、e-Taxで申告していれば納付情報の入力を省略できるケースもあるため、初めての方でも始めやすいでしょう。
  • デメリット
    アプリによっては納付金額の上限が設定されており、多額の税金を一度に支払うには不向きな場合があります。さらに、ポイント付与がないサービスもあるため、ポイント還元を重視する場合は他の支払い方法と比較する必要があります。また、現金納付などに比べて納税証明書の反映に時間がかかり、1週間~1ヶ月程度を要するケースもある点には要注意です。

スマホ決済を日常的に使っている方は、感覚的に納税手続きができるため導入しやすい反面、アプリの上限金額や対応税目、自治体との連携などをあらかじめ調べておく必要があります。

中小企業におすすめの選択肢と活用ポイント

1. クレジットカード払いのメリットを最大化するには?

クレジットカード払いはポイント還元が最大の魅力ですが、以下のような点を押さえておくことで、効果をより高められます。

(1)クレジットカード選びのポイントを理解する

  • 税金支払いでもポイントが付与されるカードを選び、高還元率を目指す。
  • 年会費と還元率のバランスに注意し、トータルでプラスが出るカードか見極める。
  • 貯まったポイントの使い道(マイル交換、ギフト券、キャッシュバックなど)を事前に検討し、活用度を高める。

(2)決済手数料とポイント還元率を綿密に比較する

  • 還元率 < 手数料率 となる場合、ポイントが付いても最終的には損をする可能性が高い。
  • 納税額が多いほど、還元率と手数料の“差”が経営コストに大きく影響する。

クレジットカード会社や自治体によって対応できる税金の種類が異なる場合もあるため、事前に確認をすることが大切です。

2. 企業規模と納税額で変わる最適解

企業の年商や事業内容によって、年間の納税額は大きく異なります。

納付にかかる手数料や還元率の恩恵も変わってくるため、ざっくりとした目安を参考にしながら、複数の方法を併用するのがおすすめです。

  • 年間納税額が30万円未満の場合
    スマホアプリやペイジーが手数料面で有利。利用限度額を超えないなら、手数料無料かつ24時間利用できるスマホアプリが利便性の高い選択肢。
  • 年間納税額が30~500万円の場合
    クレジットカード払いとペイジーの併用が効果的。カード払いでポイント還元を狙う一方、還元率が低かったり、税目によってカード払いが難しい場合はペイジーを使うなど、状況に応じて使い分ける。
  • 年間納税額が500万円以上の場合
    ダイレクト納付とクレジットカード払いを税目ごとに使い分ける。多額の納税分をすべてカード払いにすると手数料が膨れ上がる可能性があるため、決済手数料とポイント還元率を綿密に比較しながら最適なバランスを探る。

支払い方法を選ぶ際に押さえておきたい注意点

1. 納税証明書の反映時期を要チェック

支払い方法ごとに、納税証明書に反映されるまでの期間は異なります。

車検や不動産取引など、すぐに証明書が必要な場面では、以下の目安を頭に入れておきましょう。

  • 現金納付:数日以内
  • ダイレクト納付:数日以内
  • ペイジー:数日以内
  • クレジットカード:1週間程度
  • スマホアプリ:1週間~1ヶ月程度

2. 領収書の発行有無も要確認

納税を証明する書類として「領収書」が必要な場合があります。

しかし支払い方法によっては、紙の領収書が発行されないこともあるため注意が必要です。

  • 領収書が発行される:現金納付
  • 領収書が発行されない:ダイレクト納付、ペイジー、クレジットカード、スマホアプリ

領収書がない場合は、電子領収書や取引履歴のスクリーンショットを保存するなど、後々の確認のためにデータをしっかりと保管する必要があります。

3. クレジットカード払い時の手数料とポイント計算

クレジットカードで納税する際は、次のような簡単な式で「どれだけお得か(あるいは損か)」を確認できます。

実質メリット = ポイント還元額 - 決済手数料

還元率と決済手数料はカード会社や納付サイトによって異なるため、それぞれの数値を事前にチェックしておくことが重要です。

場合によっては、年会費の有無やポイントの交換レートも含めて総合的に判断する必要があります。

まとめ:最適な税金支払い方法で経営資源を最大化しよう

中小企業の経営において、「時間」はとても貴重な資源です。

税金を支払う方法ひとつで、毎回の窓口対応に割かれていた時間や手間を大幅に削減できる可能性があります。

  • 窓口納付の時間的コストを見直す
  • オンライン納付で24時間対応を実現する
  • クレジットカード納付では手数料と還元率を両天秤にかける
  • スマホアプリ納付でキャッシュレスの利便性を活用する
  • 納税証明書の反映時期・領収書の発行有無も忘れずチェック

特に、クレジットカードで税金を支払う選択肢はポイント還元が魅力的ですが、その恩恵は決済手数料の大きさを上回る場合に限られます。

また、スマホアプリは導入が簡単で手数料もかからない場合が多い一方、利用限度額や反映時期などで不都合が生じるケースも考えられます。

下記の表は、主要な支払い方法を一覧にしたものです。自社の納税頻度や金額を想定しつつ、どの方法が一番コスト削減・業務効率化につながるか、ぜひ検討してみてください。

項目現金ダイレクト納付ペイジークレジットカードスマホアプリ
手数料なしなし原則なしありなし
利用可能な税金の種類ほぼ全て国税のほとんどペイジーマーク付き納付書国税・地方税(自治体による)国税・地方税(自治体による)
領収書ありなしなしなしなし
納税証明書への反映数日以内数日以内数日以内1週間程度1週間~1か月程度
主なメリット手続きが簡単、安心感時間・場所を選ばない時間的制約が少ないポイント還元が期待できる手続きが簡単、手数料無料のケースあり
主なデメリット時間的制約、持ち歩きリスク事前準備が必要納付書が必要決済手数料、取り消し不可利用限度額やポイント付与の有無

最後に、より詳しいクレジットカードの選び方や納税制度の最新動向については、当事務所が配信しているメールマガジンで随時お知らせしています。

納税や経理の手間を少しでも減らしたい、もしくは節税をしながら経費を有効活用したいと考える経営者の方は、ぜひご登録ください。

中小企業の現場で実践できる「小さな工夫」こそが、長い目で見れば大きなコスト削減と業務効率化につながります。

ぜひ本記事を参考に、自社に合った最適な税金支払い方法を見つけ、経営資源を最大限に活かしてみてください。

🤞 税理士だから話せるここだけの話

毎週月曜日に無料でお届けしています。

✅️ ブログでは書ききれない詳細な事例解説
✅️ 経営者の悩みに税理士が直接アドバイス
✅️ 金融機関対策・税務対策の最新情報まで
✅️ その他、購読者限定の特別コンテンツ!

個人情報の取り扱いについては、プライバシーポリシーをご覧ください。