銀行融資の攻略法:銀行合併に伴う今後の資金調達戦略

皆さんこんにちは。クラウド会計で経営支援を提供する千葉の税理士、中川祐輔です。

毎週金曜日に、経営者なら知っておきたい「銀行融資」についての知識を解説しています。

昨今の銀行業界では、大規模な統合や再編が加速度的に進んでいます。この動きは、中小企業の資金調達にも大きな影響を及ぼしています。

特に地方銀行における統合の波は、企業の借入環境を大きく変えつつあります。

本記事では、変革期を迎える銀行業界の現状と、中小企業経営者が押さえるべき資金調達のポイントをご説明します。

加速する銀行統合と業界再編の現状

平成元年、日本には1,070もの金融機関が存在していました。バブル経済の絶頂期であり、企業の資金需要も旺盛でした。

しかし、その後の30年で状況は大きく変化します。現在の金融機関数はわずか525行にまで減少し、さらに今後10年で300行程度まで減少すると予測されています。

この背景には、日本経済の構造的な変化があります。GDPでは世界第3位の地位を保っているものの、人口減少と少子高齢化の進行により、今後さらなる経済規模の縮小が懸念されています。

金融庁の指導もあり、銀行は生き残りをかけた統合を進めているのです。

近年の主要な統合事例

特に注目すべきは、地方銀行における大型統合の動きです。

2016年2月には、九州地区で福岡銀行を中心とした統合が実現。

同年には千葉銀行と武蔵野銀行の経営統合も発表され、預金残高13兆円を超えるメガ地銀が誕生しました。

さらに、2017年3月には関西地区で、みなと銀行、関西アーバン銀行、近畿大阪銀行の3行統合が発表されました。

この統合により、総資産9.3兆円という大規模な地域金融グループが生まれることとなりました。

これは、関西最大の地方銀行である池田泉州銀行の約2倍の規模となります。

中小企業の資金調達環境はどう変わるのか

銀行統合の加速は、中小企業の資金調達環境に直接的な影響をもたらします。

融資判断基準の厳格化

統合後の銀行では、融資審査がより厳密になる傾向があります。

特に財務内容や事業計画の精度が重視されるようになっています。

統合によって誕生する大規模金融機関は、効率性を重視した経営を進めています。

そのため、従来のような関係性だけに頼った融資は難しくなってきており、より客観的な審査基準が適用されるようになっています。

財務体質強化の重要性

このような銀行業界の再編期において、中小企業が安定した資金調達を実現するためには、財務体質の強化が不可欠です。

従来の地域密着型金融では、長年の取引関係や経営者の人柄なども重視されてきました。

しかし、統合後の大規模金融機関では、より客観的な指標に基づいた審査が一般的となっています。

自己資本比率の目標設定

一般的な目安として自己資本比率20%以上を目指すことで、銀行からの信用力が大幅に向上します。

複数行取引の戦略的活用

銀行統合が進む中、一つの金融機関に依存するリスクは避けるべきです。

しかし、むやみに取引銀行を増やすのではなく、戦略的な取引先の選定が重要です。

特に地方銀行は地域ごとに統合の動きが異なります。例えば九州地区では、福岡フィナンシャルグループを中心とした再編が活発です。

一方、関西地区では三井住友銀行系の統合が進んでいます。このような地域性を考慮した取引先の選定が必要です。

今後の資金調達戦略

新たな資金調達手段の検討

銀行統合の進展により、従来型の銀行融資だけでなく、多様な資金調達手段を検討する必要性が高まっています。

政府系金融機関の活用

商工中金や日本政策金融公庫などの政府系金融機関は、銀行統合の影響を受けにくい安定した資金供給源となります。

これらの機関は、民間銀行とは異なる視点で融資判断を行うため、補完的な資金調達先として有効です。

新たな選択肢の検討

金融技術の発展により、クラウドファンディングやファクタリングなど、新しい資金調達手段も登場しています。

これらは、従来の銀行融資を補完する役割として活用できます。

まとめ:経営者が取るべきアクション

変化する金融環境への対応

平成元年に1,070あった金融機関は、現在525にまで減少し、今後さらに300程度まで減少する可能性があります。

この変化は、日本の人口減少や経済規模の縮小を反映したものと言えます。

具体的な準備事項

定期的な財務分析

四半期ごとに自社の財務状況を分析し、改善点を早期に把握することが重要です。

特に資金繰り指標の管理は必須となります。

今後の展望

銀行統合の波は、今後も続くことが予想されます。特に信用金庫や信用組合においては、第二次の再編が始まる可能性も指摘されています。

このような環境下では、経営者自身が金融機関の動向を把握し、自社に適した資金調達戦略を構築することが不可欠です。

限られた選択肢の中で最適な資金調達を実現するためには、平時からの準備が重要です。

財務体質の強化や複数の調達手段の確保など、今できる準備を着実に進めていくことが、企業の持続的な成長につながるのです。

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