売上アップの基本:売れ筋商品の見極め方と分析手法

皆さんこんにちは。クラウド会計で経営支援を提供する千葉の税理士、中川祐輔です。

毎週火曜日に、経営者なら知っておきたい「売上増加」についての知識を解説しています。

小売業やサービス業において、商品構成の最適化は売上向上の要となります。

しかし、「どの商品に力を入れるべきか」という判断は、多くの経営者にとって永遠の課題となっています。

本記事では、実店舗での具体的な成功事例を交えながら、効果的な商品分析の手法と、その実践方法についてご紹介します。

商品分析の落とし穴

多くの店舗経営者は、「売上の高い商品が最も重要である」という考えに縛られがちです。

しかし、実際の現場ではそれほど単純ではありません。以下に、よくある分析の落とし穴をご紹介します。

ある文具店のオーナーは、こんな失敗体験を語ってくれました。

  • 売上は高いものの、利益率の低い商品に経営資源を集中させすぎてしまった
  • 結果として全体の収益性が悪化してしまった

また、別の店舗では次のような課題に直面していました。

  • 人気商品の在庫管理が不十分で、頻繁に品切れを起こし、顧客の信頼を失ってしまった
  • 新商品への注力のあまり、地味ではあるが安定した売上を誇る定番商品のケアがおろそかになった

これらの事例から分かるように、単純な売上額だけでは、商品の真の価値を測ることはできないのです。

成功店舗に共通する3つの分析視点

実績を上げている店舗では、商品分析において以下の3つの視点を重視していることが分かりました。

それぞれの視点について、具体的な事例と共にご説明します。

1. 粗利額の重要性

売上が高い商品が必ずしも利益に貢献しているとは限らないのです。

ある雑貨店の売上と粗利の関係を、具体例で見ていきましょう。

たとえば、次の2つのケースを比較してみます。

ケースA:低単価商品の場合

  • 商品単価:500円
  • 販売個数:100個
  • 売上総額:5万円
  • 粗利率:20%
  • 粗利額:1万円

ケースB:高単価商品の場合

  • 商品単価:5,000円
  • 販売個数:8個
  • 売上総額:4万円
  • 粗利率:40%
  • 粗利額:1.6万円

売上金額だけを見ると、ケースAの方が高いように見えます。

しかし、実際の粗利額を計算してみると、ケースBの方が店舗の収益に大きく貢献していることが分かります。

2. 販売個数の重要性

数字の裏に隠れた真実を見逃さないことが大切です。あるカフェでの興味深い発見をご紹介します。

このカフェでは、華やかな見た目で人気の高いパフェが看板メニューでした。

ところが、実際の売上データを詳しく分析してみると、意外な事実が判明したのです。

実は、地味に見えるコーヒーの方が、総利益への貢献度が高かったのです。

その理由は、次の3つの要因にありました。

  1. 安定した注文数の確保
    • 1日を通して安定した注文がある
    • 季節変動が少なく、年間を通じて売上が見込める
  2. 効率的な提供体制
    • 提供までの時間が短い
    • 作業手順が標準化されており、新人でも安定した品質を提供できる
    • 1時間あたりの提供可能数が多い
  3. 優れた原価管理
    • 材料の使用量が安定している
    • 廃棄ロスが少ない
    • 仕入れ価格の変動が小さい

3. 成長率の分析

今日の売上も大切ですが、明日への可能性はもっと大切です。

成長率の分析は、商品の将来性を見極める上で非常に重要な指標となります。

前年との比較分析により、次のような重要な示唆が得られます。

  1. 市場トレンドとの適合性
    • 成長商品は、多くの場合、市場ニーズを的確に捉えている
    • トレンドの初期段階で気づくことで、先手を打った対応が可能に
  2. 商品の将来性予測
    • 継続的な成長は、商品の本質的な価値を示している
    • 季節要因や一時的なブームと区別することが重要
  3. 重点強化カテゴリーの特定
    • 成長率の高い商品カテゴリーに経営資源を集中
    • 関連商品の開発やラインナップ拡充の判断材料に

実践的な商品分析手法

「分析は難しそう」という声をよく耳にしますが、実は基本的な手法は非常にシンプルです。以下に、具体的な分析手順をご紹介します。

商品マトリクス分析の実践

ある洋服店での分析事例を基に、効果的な商品分類方法をご説明します。

まず、販売個数(横軸)と単価(縦軸)で2×2のマトリクスを作成し、商品を以下の4つに分類します。

  1. 定番商品(右上):
    • 特徴:高単価かつ販売個数が多い
    • 役割:収益の柱となる主力商品
    • 管理ポイント:安定供給の確保、品質管理の徹底
  2. 集客商品(右下):
    • 特徴:低単価で販売個数が多い
    • 役割:新規顧客の獲得、来店動機の創出
    • 管理ポイント:適正な在庫確保、効果的な販促活用
  3. 特別商品(左上):
    • 特徴:高単価だが販売個数は少ない
    • 役割:店舗のブランド価値向上、専門性のアピール
    • 管理ポイント:重点的な接客対応、商品知識の向上
  4. 要注意商品(左下):
    • 特徴:低単価かつ販売個数が少ない
    • 役割:品揃えの補完、特定顧客ニーズへの対応
    • 管理ポイント:在庫の最小化、定期的な見直し

分析結果の活用事例

実際の活用事例として、あるパン屋での成功例をご紹介します。

マトリクス分析の結果、当初は見過ごしていた菓子パンが、実は重要な集客商品としての役割を果たしていたことがわかりました。

この発見を基に、以下のような戦略的な施策を実施しました。

  1. 菓子パンを目玉商品として販促を強化
  2. 来店客に対して高単価の食パンを重点的にアピール
  3. 商品陳列の配置を最適化

その結果、全体の売上が20%向上するという成果を上げることができました。

データに基づく品揃えの最適化

効果的な商品分析により、より戦略的な品揃えの最適化が可能となります。以下に、具体的な取り組み方をご紹介します。

成長商品の発掘と育成

あるお菓子屋で販売データを分析する中で、どら焼きの売上が着実に成長していることに気づきました。

具体的な推移は以下の通りです。

  • 1年目:月間販売数 200個
  • 2年目:月間販売数 240個(前年比120%)
  • 3年目:月間販売数 300個(前年比125%)

顧客の声を分析したところ、「しっとりした生地の食感」が特に評価されていることが判明しました。

この知見を新商品開発にも活かすことで、さらなる成長につながりました。

定番商品の重要性

ある文房具店の経験は、定番商品の重要性を再認識させる良い例です。

この文房具店では、新商品の導入に気を取られ過ぎた結果、定番の筆記具の在庫管理がおろそかになってしまいました。

これにより、常連客の信頼を失いかけた経験があります。そこで、定番商品を守るための重要ポイントとして、以下の施策を実行しました。

  1. 適切な在庫管理の徹底
    • 発注点の明確な設定
    • 定期的な在庫確認の実施
  2. 関連商品との相乗効果の創出
    • セット販売の企画
    • 使用シーンに基づく商品提案
  3. 顧客ニーズへの継続的な対応
    • 使用方法の丁寧な説明
    • 顧客フィードバックの収集と活用

すぐに始められる商品分析のステップ

高度な分析ツールがなくても、以下の手順で効果的な商品分析を始めることができます。

基本の3ステップ

  1. 売上ベスト10のリストアップ
    • 月次での売上上位商品の確認
    • カテゴリー別の売上構成の把握
  2. 各商品の粗利計算
    • 原価率の確認
    • 実質的な収益貢献度の把握
  3. 前年比較による傾向分析
    • 成長商品の特定
    • 衰退商品の早期発見

このシンプルな3ステップから、多くの気づきが得られ、具体的な改善アクションにつながっていきます。

おわりに

商品分析は、決して複雑な作業である必要はありません。

むしろ、日々の営業の中で得られるデータと顧客の声に真摯に向き合うことが、最も重要な第一歩となります。

本記事でご紹介した分析手法は、あくまでも基本的なフレームワークです。

これらを参考に、各店舗の特性に合わせた分析方法を確立していくことで、より効果的な商品戦略の立案が可能となるでしょう。

次回は「確実に成果を出す販促施策の選び方」について、すぐに実践できる具体例をご紹介していきます。引き続きご期待ください。

🤞 税理士だから話せるここだけの話

毎週月曜日に無料でお届けしています。

✅️ ブログでは書ききれない詳細な事例解説
✅️ 経営者の悩みに税理士が直接アドバイス
✅️ 金融機関対策・税務対策の最新情報まで
✅️ その他、購読者限定の特別コンテンツ!

個人情報の取り扱いについては、プライバシーポリシーをご覧ください。