個人事業主と法人では経費になるものが違う?税理士が具体例を使って解説
皆さんこんにちは。クラウド会計で経営支援を提供する千葉の税理士、中川祐輔です。
毎週水曜日に、経営者なら知っておきたい「節税対策」についての知識を解説しています。
本記事では、個人事業主では経費化が難しいが、法人なら可能性があるというものについて詳しく解説します。
法人化のメリット:経費の幅広い活用
個人事業主から法人化を検討している方、また既に法人化しているものの経費の活用に不安を感じている方にとって、この情報は非常に重要です。
法人化により、経費として計上できる項目が大幅に増えるのです。
では、具体的にどのような経費が法人では認められるのでしょうか?
以下、重要な節税対策を見ていきましょう。
節税対策その1:役員報酬の活用
役員報酬は、法人における節税の要となります。
個人事業主の場合、オーナーへの人件費という概念はありませんが、法人では社長個人に人件費を支払うことができます。
役員報酬の活用例
例えば、報酬支給前の利益が3000万円の会社があり、役員報酬を2000万円としていた場合を考えてみましょう。
ここで1000万円の経費を新たに計上し、役員報酬を1000万円に減額すると、以下のような効果が得られます:
- 経費計上前:社会保険料、法人税等、所得税・住民税の合計が約1261万円
- 経費計上後(役員報酬調整あり):合計約786万円
この差額、約475万円が節税効果となります。
さらに、会社に残った資金を401Kなどの積み立てや、他の節税策に活用することで、より効果的な節税が可能になります。
節税対策その2:旅費日当の活用
法人では、旅費日当を経費として計上できます。
個人事業主では旅費日当の概念がありませんが、法人では旅費規定を整備することで経費化が可能になります。
旅費日当の活用例
役員報酬1000万円を支払っていた場合、社会保険料と所得税・住民税の合計が約413万円になります。
ここで年間300万円の日当を設定し、役員報酬を700万円に減額すると、合計が約285万円になります。
その差額、128万円が節税効果となります。
節税対策その3:交際費の活用
法人の場合、交際費の範囲が個人事業主よりも広くなります。
ビジネスに間接的に関係する人に対する交際費も、経費として計上できる可能性があるのです。
交際費の活用例
例えば、友人との食事代も、その友人が少しでも仕事に役立つ情報を持っていたり、事業の相談に乗ってくれたりする場合、交際費として計上できる可能性があります。
ただし、税務調査に備えて、話し合った事項をメモしたり、領収書の裏に記録しておくことをおすすめします。友人との食事というだけでは認められません。
節税対策その4:家賃の活用
法人では、社宅家賃として家賃の大部分を経費にすることができます。
個人事業主の場合、仕事に使用している部分のみしか経費にできませんが、法人の場合は基本的に5~9割を経費化できる可能性があります。
これは、法人の場合、従業員のための福利厚生の一環として社宅制度を設けることができ、それが社長にも適用されるためです。
節税対策その5:退職金の活用
法人では、退職金を支払うことができます。退職金には税制優遇があり、大きな節税効果が期待できます。
退職金の活用例
20年間勤務したと仮定し、以下の2つのケースを比較してみましょう:
- 役員報酬6億円を20年間で均等に支給した場合
- 社会保険料、所得税・住民税の合計:約1億6599万円
- 役員報酬3億円を20年間で均等に支給し、20年後に退職金として3億円を支給した場合
- 社会保険料、所得税・住民税の合計:約1億5512万円
結果として、3億円分を退職金として支給した場合、1087万円の節税効果が得られます。
節税対策その6:福利厚生費の活用
法人では、一人で食べる食事代も福利厚生費として経費化できる可能性があります。
個人事業主では難しいこの経費化も、法人ならば可能なのです。
昼食代の経費化条件
- 会社が支給する形であること(現金支給は不可)
- 1食あたり半分以上の金額を個人が負担すること
- 月3500円以内であること
夜食(残業時の食事)の経費化
夜食については、条件がさらに緩和されます:
- 会社が支給する形であること(昼食と同様)
- 個人負担や月額の制限なし
残業時の食事代であれば、全額経費化できる可能性があります。
節税対策を考える上での重要なポイント
節税対策を学ぶ際は、常に自身の目的を忘れないことが大切です。
単に税金を安くすることだけが目的ではなく、事業の成長や資産の保護といった本来の目的に沿った形で節税を考えましょう。
また、すべての税金知識を完璧に理解する必要はありません。自身のビジネスに直接関係する知識のみを効率的に学び、実践することが重要です。
まとめ:法人化で広がる節税の可能性
今回紹介した節税対策は、法人ならではのものばかりです。
個人事業主よりも法人の方が、経費化の範囲が広いことがおわかりいただけたでしょうか。
法人化を検討している方は、これらの節税効果も考慮に入れて判断してください。
既に法人化している方も、まだ活用していない節税策がないか、今一度確認してみましょう。
ただし、節税対策を実施する際は、必ず税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
適切な方法で節税を行うことで、事業の成長と資産の保護を両立させることができるでしょう。
賢明な経営者は、適切な節税対策を通じて、事業の発展に必要な資金を確保します。
本記事で紹介した方法を参考に、あなたのビジネスに最適な節税戦略を見つけ出してください。