スポーツジムは経費で通えるのか?個人と法人の違いを徹底解説

皆さんこんにちは。クラウド会計で経営支援を提供する千葉の税理士、中川祐輔です。

毎週水曜日に、経営者なら知っておきたい「節税対策」についての知識を解説しています。

経営者や個人事業主としてビジネスを進めていくうえで、健康管理は非常に重要なテーマです。

健康な身体づくりは仕事の生産性を高め、長期的なビジネスの成功にも大きく寄与すると考えられています。

では、そのスポーツジム代を経費に落とすことはできるのでしょうか?

個人事業主として事業を営んでいる場合と、法人として会社を運営している場合とでは取り扱いが異なります。

本記事では、個人事業主・法人それぞれの視点から、スポーツジムの費用を経費化できるのか?必要なポイントは何か?を詳しく解説します。

個人事業主のスポーツジム経費化について

個人事業主は基本的に経費にできない

結論からいうと、個人事業主がスポーツジムに支払った費用を経費として計上することは、ほぼ不可能とされています。

理由は「売上との直接的な関連性を説明するのが困難」であるためです。

筋トレによって得られるメリットは大きいものの、それが「事業の売上に直結している」と税務当局に説明するのはきわめて難しいのが現実です。

個人事業主としてジム代を経費に認めてもらうためには、税務署の調査において「これらの支出が業務遂行上、必要不可欠である」と立証しなければなりません。

しかし、筋肉を鍛えることが業務にどこまで必要なのかを客観的に示す証拠を用意するのは至難の業です。

その結果、仮に確定申告で経費として計上したとしても、後に税務調査で否認されるケースが非常に多いのです。

経費認定の重要な2つのポイント

個人事業主にとってはハードルが高い経費化ですが、税務上の争点にもなりやすい「必要経費」の考え方を理解することは大切です。

過去の裁判事例から得られた、個人事業主の必要経費についての重要なポイントは、次の2つに整理できます。

少し補足しておくと、これらのポイントはスポーツジムだけでなく、

個人事業主がさまざまな支出を経費に落とそうとするときに問題になりやすい観点です。

では、具体的に見ていきましょう。

  1. 売上との関連性が曖昧である場合、非常に厳しく判断される
    個人事業主の支出がプライベートなものか事業に紐づくものかは、事実認定が微妙になります。
    しかも、その関連性を裏付ける資料は納税者(個人事業主)自身が保有すべきとされています。
  2. 経費の立証責任は納税者側にある
    必要経費として認められれば、納税者に有利に働きます。
    しかし、その有利な主張は自ら証拠を示す必要があるため、「この支出が事業に必要です」と説得力ある形で提示しなければいけません。

以上の2点は、税務調査の際に頻繁に指摘されるポイントです。

特にスポーツジム代の場合は、「事業に直接必要」と言い切ることが難しく、「個人的な健康目的ではないか?」とみなされやすい傾向にあります。

そのため、実際に税務調査を受けた個人事業主の約90%が経費としての認定を否認されてしまうのが現状です。

このように、個人事業主にとってスポーツジムの費用を経費化するハードルは高く、「ほとんど不可能」と言われるのもあながち間違いではありません。

法人でのスポーツジム経費化の可能性

福利厚生としての活用

一方、法人の場合はスポーツジムを「福利厚生費」として導入し、経費計上することが可能です。

企業が従業員の健康管理を促進するために福利厚生の一環としてスポーツジムを利用するのは、税務上も比較的認められやすいのです。

ただし、だからといって無条件に全額を経費にできるわけではありません。

税務当局からも「正当に福利厚生として扱われているかどうか」を厳しくチェックされるため、以下で紹介するルールを満たすことが重要になります。

経費化のための3つの重要ルール

では、具体的にどんなルールがあるのでしょうか。

法人でスポーツジム会員を経費化する場合には、次の3つの条件を押さえておかなければなりません。

ここで一言添えておくと、これら3つのルールは大企業はもちろんのこと、中小企業や一人社長の会社であっても同じように求められる要件です。

  1. 法人会員になること
    • スポーツジムの法人会員として契約する必要があります。
    • 会費を会社が支払っている形でなければ、福利厚生費としては認められません。
    • 個人で契約している場合は、たとえ法人カードで支払ったとしても原則として経費化は難しいです。
  2. 全社員を対象とすること
    • 特定の役員だけを対象にしてしまうと、単なる役員報酬とみなされる可能性が高くなります。
    • 福利厚生費として認められるためには、全従業員が利用できる仕組みになっていることが重要です。
  3. 福利厚生規定を整備すること
    • 社員の健康増進や生活向上を目的とする制度であることを文書化しておきましょう。
    • 規定には、最低でも「目的」「対象のスポーツ施設」「対象者」「費用」「申請方法」「利用期間」などが盛り込まれている必要があります。
    • しっかり規定を作って運用しておけば、税務調査でも「福利厚生として適正に行っている」と主張しやすくなります。

以上のように、法人であればスポーツジムを経費に計上できる可能性は大いにあります。

ただし、上記ルールを怠った場合には、たとえ法人であっても経費としては認められません。

「役員だけがこっそり使っていた」などと指摘されると、最悪の場合、否認されて追徴課税を受けるリスクもあるので注意が必要です。

一人社長・家族経営での活用方法

一人社長・家族経営でも経費計上は可能

よくある誤解として、「一人社長や家族経営の会社では福利厚生費が使えない」という話を耳にすることがあります。

しかし、実際のところは違います。法律上、一人社長や家族経営だからといって福利厚生の制度が使えないわけではありません。

むしろ、法人格を有している以上、大企業と同じようにルールにのっとった福利厚生制度を設けていれば、スポーツジムの費用も「福利厚生費」として計上することが可能になります。

しっかり規定を整備することが大切

ただし、家族や自分しか従業員がいない場合でも、適当に運用してしまうと「個人の私的利用」とみなされてしまいます。

そこで重要なのが、「福利厚生規定」の整備です。

大きな会社と同じように、「会社として社員の健康を促進するためにスポーツジムを活用する」という方針を明確に規定し、運用していくことが求められます。

このように文書化しておくことで、税務調査のときにも「会社として正しく福利厚生を実施している」と説明しやすくなるのです。

法人契約締結のための実践的なコツ

ジムとの契約をスムーズに進めるために

一人社長や家族経営だと、スポーツジム側から法人契約を断られるケースも考えられます。

「従業員が一人だけなら法人契約するメリットが少ないのでは?」と判断されるためです。

しかし、以下のポイントを意識して交渉すれば、契約を結べる可能性はグッと高まります。

  1. 将来の展望を伝える
    • 「いずれ従業員を増やしていく予定がある」「会社として健康経営に注力していく方針がある」など、今後のビジョンを具体的にアピールする。
    • 一人社長や小規模でも、長期的に見れば法人としての契約がジム側にもメリットをもたらすことを強調する。
  2. スポーツジム側のメリットを提示する
    • 早期の会員囲い込みが、ジム側にとっても安定した収益につながることを示す。
    • 知り合いの経営者を紹介できる可能性を伝えるなど、「法人としてのネットワーク活用」もPRする。

こうした交渉材料を提示することで、ジム側も「将来的にお客さんを増やせるかもしれない」と期待を持ち、法人契約を受け入れてくれる可能性が高まるでしょう。

まとめ:賢く法人を活用して経費を節約しよう

個人事業主のスポーツジム代は経費化が難しい一方で、法人であれば「福利厚生費」として認められる可能性があります。

一人社長や家族経営であっても、以下の3点を押さえることが重要です。

  1. 福利厚生規定を整備し、規定通りに運用する
  2. 従業員全体に利用機会を開放する
  3. 法人会員として契約する

適切な制度設計と運用を行えば、規模に関係なく経費化は可能です。より良い経営環境づくりのために、この制度を活用していきましょう。

経費化の方法や規定の整備について不安な点がございましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。

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