最大数百万円の節税効果!住宅ローン控除完全活用ガイド

皆さんこんにちは。クラウド会計で経営支援を提供する千葉の税理士、中川祐輔です。

毎週水曜日に、経営者なら知っておきたい「節税対策」についての知識を解説しています。

「家を買いたいけど、住宅ローンってなんだか難しそう…」「住宅ローン控除ってよく聞くけど、実際どんな制度なの?」

マイホーム購入を検討する上で、住宅ローンと切っても切り離せないのが住宅ローン控除です。

住宅購入は人生で最も大きな買い物の一つであり、多くの方がローンを組んで資金を調達しますが、その際に大きな味方となるのがこの制度です。

そこで、本記事では、住宅ローン控除とは何か、どんな条件で利用できるのか、そしてどのように手続きを行うのかなどについて、わかりやすく丁寧に解説していきます。

住宅ローン控除とは

1. 住宅ローン控除の概要

住宅ローン控除は、正式名称を「住宅借入金等特別控除」といい、住宅ローンを組んで住宅を取得した人が、一定の条件を満たすことで所得税や住民税から控除を受けられる制度です。

主な目的は、国民が無理のない負担で住宅を取得できるようにし、住まいの確保を促進することにあります。

2. 住宅ローン控除の対象者

では、実際にどのような方が住宅ローン控除の対象になるのでしょうか。

以下に挙げる条件をすべて満たすことで、住宅ローン控除を受けられる可能性があります。

ここからは、具体的な条件について一覧にまとめますが、後ほど詳しく解説しますので、まずは全体像を押さえてください。

  • 住宅を購入し、自ら居住すること
  • 住宅の引き渡しや工事終了から6か月以内に入居し、そのまま居住していること
  • 住宅の床面積が50平方メートル以上であること
  • 住宅の床面積の2分の1以上が、自身の居住用であること
  • 10年以上の返済期間がある住宅ローンを利用していること
  • 住宅ローン控除を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下であること
  • 現行の耐震基準を満たしていること(買取再販住宅や買取再販認定住宅などを除く)

なお、合計所得金額が年間1,000万円以下で、かつ2023年末までに建築確認が済んでいる新築住宅の場合は、床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満でも住宅ローン控除の対象になるケースがあります。

住宅ローン控除の適用条件

実際に住宅ローン控除を受けるためには、先ほど触れた要件に加えて、住宅の種類や入居時期ごとに細かい適用条件が設けられています。

ここでは、「新築住宅」「中古住宅」「リフォーム」の3つに分けて、具体的に解説していきます。

1. 新築住宅の場合

新築住宅で住宅ローン控除を受けるには、以下の条件を満たす必要があります。まずは内容を理解しておきましょう。

  • 住宅ローンの返済期間が10年以上であること
  • 自ら居住していること
  • 床面積が50㎡以上あること
  • 引渡しまたは工事完了から6か月以内に入居していること
  • 居住用割合が1/2以上あること
  • 合計所得金額が2,000万円以下であること

さらに、2024年以降に建築確認を受けた新築住宅の場合は、原則として省エネ基準に適合する必要がある点に注意しましょう。

2. 中古住宅の場合

次に、中古住宅の場合です。中古住宅は新築住宅の条件に加え、次のいずれかの要件を満たす必要があります。

  • 1982年1月1日以降に建築された住宅であること
  • 現行の耐震基準に適合していること

築年数が比較的古い物件でも、耐震改修などを行うことで基準を満たせば、住宅ローン控除の適用を受けられる可能性があります。

3. リフォームの場合

最後に、リフォーム(増改築)の場合の条件をみていきましょう。リフォーム後の床面積や工事費用について、以下の点がチェックされます。

  • リフォーム後の床面積が50㎡以上であること
  • リフォーム費用から補助金などを引いた残りの金額が100万円以上で、その2分の1以上が居住用部分の工事に使用されたこと

そして、以下のいずれかに該当する工事であることが、住宅ローン控除の適用条件です。

  • 増築・改築・建築基準法に規定する大規模な修繕、または大規模な模様替えの工事
  • マンションの専有部分の床、階段、壁の過半について行う一定の修繕・模様替えの工事
  • 居室・キッチン・浴室・トイレ・洗面所・納戸・玄関または廊下の一室における床や壁の全部について行う修繕・模様替えの工事
  • 耐震改修工事(現行の耐震基準への適合)
  • 一定のバリアフリー改修工事
  • 一定の省エネ改修工事

住宅ローン控除の種類

次に、住宅ローン控除の種類について整理しましょう。

住宅の種類や性能によって、借入限度額や控除期間などが異なります。

下表を参考に、どのタイプの住宅がどれに該当するかを把握してみてください。

区分住宅性能子育て世帯・若者夫婦世帯それ以外控除期間控除率
新築・買取再販住宅長期優良住宅・低炭素住宅5,000万円4,500万円13年0.7%
新築・買取再販住宅ZEH水準省エネ住宅4,500万円3,500万円13年0.7%
新築・買取再販住宅省エネ基準適合住宅4,000万円3,000万円13年0.7%
新築・買取再販住宅その他の住宅0円10年0.7%
既存住宅長期優良住宅・低炭素住宅3,000万円10年0.7%
既存住宅ZEH水準省エネ住宅3,000万円10年0.7%
既存住宅省エネ基準適合住宅3,000万円10年0.7%
既存住宅その他の住宅2,000万円10年0.7%

2024年からは、住宅の性能に応じて、控除の適用有無や借入限度額が変更されました。

たとえば、省エネ基準を満たさない一般住宅の場合は、住宅ローン控除が受けられない可能性があるため、建築計画や物件選びの際に要確認です。

住宅の性能区分

1. 一般住宅

一般住宅は、長期優良住宅、認定低炭素住宅、ZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅といった認定基準を満たさない住宅を指します。

2024年以降に建築確認を受けた新築住宅で、省エネ基準を満たさない場合は、住宅ローン控除を受けられません。

2. 認定住宅

認定住宅とは、国が定めた基準をクリアして認定を受けた住宅です。たとえば、「長期優良住宅」や「認定低炭素住宅」があります。

  • 長期優良住宅:長期にわたり良好な状態で使用するための措置を講じた優良住宅。
  • 低炭素住宅:二酸化炭素の排出量削減に配慮した住宅。

認定住宅は、地震に強く劣化しにくいなど安心安全な居住環境を長く保ちやすいという利点があり、住宅ローン控除上も優遇措置があります。

3. 省エネ住宅

省エネ住宅とは、ZEH水準省エネ住宅や省エネ基準適合住宅など、断熱性が高くエネルギー消費量が少ない住宅のことを指します。

  • ZEH水準省エネ住宅:年間の一次エネルギー収支をできるだけ「ゼロ」に近づける住宅を指し、日本住宅性能表示基準で断熱等級5、一次エネ等級6を有する住宅。
  • 省エネ基準適合住宅:同基準で断熱等級4以上、一次エネ等級4以上を満たす住宅。

省エネ住宅は光熱費の節約に役立つだけでなく、税制上の優遇を受けやすいのが特徴です。

また、2025年以降は新築住宅の省エネ基準適合が義務化される予定です。

住宅ローン控除額の計算方法

住宅ローン控除額は、以下の計算式で求められます。

控除額 = 年末の住宅ローン残高 × 控除率(0.7%)

ただし、控除額には年間の上限が設定されており、住宅の種類や性能によって異なる借入限度額が適用されます。

また、所得税から控除しきれなかった分は、翌年度の住民税から最大9万7,500円まで控除が可能です。

金利が低い住宅ローンを利用している場合、支払う利息より控除額のほうが大きくなる「逆ざや」が発生する可能性もあります。

この場合、実質的にローンの負担を抑えつつ家を取得できることになるため、家計にとっては大きなメリットです。

住宅ローン控除の控除期間

次に、住宅ローン控除の控除期間を確認しましょう。

住宅の種類によっては13年適用が可能なケースもありますが、一般的には以下のように期間が定められています。

  • 新築住宅:原則13年間(条件によっては10年間の場合あり)
  • 中古住宅:10年間
  • リフォーム:10年間

住宅ローン控除を受けるための手続き

住宅ローン控除を受ける際は、確定申告によって申請するのが基本です。ここからは、確定申告時に必要な書類や提出方法を確認しましょう。

1. 確定申告に必要な書類

確定申告にあたっては、以下の書類が必要となります。どれも重要書類ですので、事前にしっかりと準備しておきましょう。

  • 確定申告書
  • 源泉徴収票
  • 本人確認書類の写し
  • 住宅ローンの年末残高等証明書
  • 建物・土地の不動産売買契約書(請負契約書)の写し
  • 建物・土地の登記事項証明書(登記簿謄本)
  • 住宅借入金等特別控除額の計算明細書
  • 住宅の種類に応じて必要な証明書類(例:長期優良住宅認定通知書、省エネ基準適合住宅の証明書など)

2. 申請時期

確定申告の一般的な申告期間は、翌年2月16日から3月15日までです。

ただし、還付申告のみであれば1月から提出できるため、早めに申告書を作成しておくのがおすすめです。

3. 提出方法

提出方法は、以下の3通りがあります。ご自身の環境に合わせて選択しましょう。

  • e-Taxで提出:必要書類をPDFなどのイメージデータで送付可能
  • 郵送で提出:税務署宛に必要書類を郵送
  • 税務署に持参して提出:窓口で直接提出し、確認を受ける

住宅ローン控除の対象となるローン

住宅ローン控除の対象ローンは、金融機関、住宅金融支援機構、あるいは一定の貸金業者からの借入金に限られます。以下に、その概要を示します。

  • 対象:銀行や信用金庫、住宅金融支援機構、登録された貸金業者からの借入
  • 対象外:親族・知人からの個人的な借入、自己が役員を務める会社や親族の会社からの借入

せっかく要件を満たしていても、借入先が住宅ローン控除の対象外だった場合は、控除が受けられません。事前に借入先を確認しましょう。

住宅ローン控除のメリット・デメリット

ここからは、実際に住宅ローン控除を活用した場合のメリットとデメリットをまとめてみます。制度の良い面だけでなく、注意すべき点もしっかり理解しておきましょう。

1. メリット

住宅ローン控除を活用するメリットは、以下のとおりです。いずれも家計や将来設計に大きなプラスとなり得ます。

  • 節税効果:所得税や住民税が控除されるため、税負担が軽くなる
  • 家計への負担軽減:上記節税効果によって、結果的に住宅購入後の支出を抑えられる
  • 長期的な資産形成のサポート:負担軽減により、ローン返済後の資産形成を後押ししてくれる

2. デメリット

一方で、住宅ローン控除には、以下のようなデメリットや注意点も存在します。利用前にしっかり把握しておきましょう。

  • 控除期間終了後の税負担増:控除期間が終わると軽減措置がなくなるため、負担が元に戻る
  • 借入期間が10年未満では利用不可:短期完済を目指す人は対象外となる
  • 所得制限あり:合計所得金額が2,000万円を超えると適用されない
  • ローン以外の購入方法では対象外:現金一括払いなど、ローンを組まない場合は控除を受けられない

住宅ローン控除に関する専門用語

住宅ローン控除では、普段あまり耳にしない用語が登場することがあります。

以下に代表的なものをまとめましたので、申請や手続きを進めるうえで参考にしてください。

用語解説
年末残高毎年12月末時点の住宅ローン残高のこと。
控除率年末残高に乗じる控除の割合のこと。2024年以降は0.7%が適用される。
控除期間住宅ローン控除が適用される期間。住宅の種類によって10年 or 13年。
借入限度額住宅ローン控除の対象となる借入の上限。住宅の性能などによって異なる。
所得要件住宅ローン控除を受ける人の所得に関する条件。合計所得金額2,000万円以下など。
床面積要件住宅の床面積に関する条件。原則50㎡以上だが、要件次第で40㎡以上でも可。

住宅ローン控除の最新情報

住宅ローン控除は、法改正によって制度内容が随時変更される可能性があります。

特に、近年では環境や省エネ性能が重視されており、省エネ住宅に対して優遇措置が拡大してきました。

実際、2022年の税制改正でも、環境に配慮した住宅ほど住宅ローン控除のメリットが大きくなるように修正されています。

今後も変更が生じる場合があるため、国土交通省や国税庁のウェブサイトをこまめにチェックし、最新情報を確認するようにしましょう。

まとめ

ここまで、住宅ローン控除の概要や適用条件、計算方法、手続きの流れなどを一通り解説してきました。

住宅ローン控除は、住宅取得の費用負担を軽減できる非常に有効な制度ですが、細かな条件や手続きが複雑なため、見落としがあると思わぬ損につながりかねません。

特に、2024年以降は住宅の省エネ性能が一層重視されるようになり、省エネ基準を満たさない一般住宅は控除の対象外になってしまうケースもあります。

大きな買い物だからこそ、あらかじめ制度や条件を十分に確認しておくことが重要です。適用条件や手続き方法などをしっかり理解して、ぜひ活用してください。

住宅ローン控除は複雑な制度であるため、疑問点や不安な点がある場合は、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

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  • 相続税対策まで見据えた、住宅取得を通じた総合的な節税プランニング
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