売上アップの方程式:顧客のランク分けで、的確なアプローチを実現する
皆さんこんにちは。クラウド会計で経営支援を提供する千葉の税理士、中川祐輔です。
毎週火曜日に、経営者なら知っておきたい「売上増加」についての知識を解説しています。
「うちのお客様は、みんな大切なお客様です」
経営者の皆様から、よくこのような言葉を耳にします。もちろん、その想いは素晴らしいものです。
しかし、限られた経営資源の中で最大の効果を出すためには、お客様の分類と、それに応じた適切なアプローチが必要になります。
今回は、私がこれまでの経営支援の中で培ってきた、実践的な顧客ランク分けの手法についてお伝えします。
なぜ顧客ランク分けが必要なのか
ある美容院での支援事例をお話しします。
店長は「すべてのお客様に最高のサービスを」と考え、新規のお客様にも常連のお客様にも同じように接していました。
しかし、データを分析してみると、売上の60%以上が来店回数の多い上位20%のお客様によってもたらされていることが判明。
この発見により、優良顧客へのアプローチを強化し、結果として売上を35%向上させることができました。
実践的な顧客ランク分けの方法
具体的には、以下の4つのランクに分類することをお勧めします:
- 新規客:
- 定義:1ヶ月以内に初めて来店したお客様
- ※業態によって期間は調整(美容室なら2-3ヶ月など)
- 既存客:
- 定義:3ヶ月以内に3回以上来店されたお客様
- 安定的な売上の基盤となる層
- 優良客:
- 定義:売上貢献度の上位20%のお客様
- 来店頻度、客単価の両面で重要な層
- VIP顧客:
- 定義:優良客の中でも特に重要なお客様
- 全体の5%程度を目安に設定
顧客ピラミッドの重要性
これらの顧客層は、ピラミッド型で表現するとわかりやすくなります:
VIP顧客 (5%)
優良客 (15%)
既存客 (30%)
新規客 (50%)
このピラミッドを見ると、売上増加の本質が見えてきます。それは「下の層から上の層への移行を促進すること」です。
例えば:
- 新規客を既存客に昇格させる(リピート促進)
- 既存客を優良客に育てる(客単価アップ)
- 優良客をVIP顧客に育てる(特別サービスの提供)
各ランクに対する具体的なアプローチ
それぞれのランクに対して、以下のようなアプローチが効果的です:
新規客に対して
- 次回来店の動機付けを明確に
- 初回特典の設定
- フォローアップの連絡
既存客に対して
- ポイントカードの活用
- 定期的な情報提供
- 季節のおすすめ商品の案内
優良客に対して
- 優先予約枠の確保
- 特別イベントへの招待
- 新商品の先行案内
VIP顧客に対して
- 専用のサービスメニュー
- 誕生日月の特別特典
- 個別のニーズ対応
よくある課題と解決策
顧客ランク分けを実施する際、よく直面する課題とその解決策をご紹介します:
- 「顧客情報の収集が難しい」
- 解決策:ポイントカードやアンケートを活用
- 次回、具体的な方法をお伝えします
- 「ランク分けが難しい」
- 解決策:まずは来店回数のみで分類
- 徐々に客単価なども加味
- 「特別対応の負担が大きい」
- 解決策:できることから段階的に実施
- スタッフ全員で対応方法を共有
- 「ランクによる差別化に抵抗がある」
- 解決策:サービスの「追加」という形で実施
- 基本サービスは全顧客に平等に提供
成功事例:飲食店での実践例
あるラーメン店での事例をご紹介します。月商600万円程度の店舗でしたが、以下のような取り組みで、月商800万円まで成長しました:
- 来店回数による簡易的なランク分け開始
- LINE公式アカウントでの情報発信
- ランク別の特典設定
- 既存客:トッピング1品サービス
- 優良客:特別メニューの提供
- VIP:店主特製の限定メニュー
特に効果的だったのは、優良客への特別メニュー提供です。SNSでの情報拡散も相まって、新規客の獲得にも貢献しました。
おわりに
顧客ランク分けは、決してお客様を差別するものではありません。
むしろ、各お客様に最適なサービスを提供するための重要なツールです。
まずは簡単なランク分けから始めて、徐々に精緻化していくことをお勧めします。
その過程で見えてくる「お客様の声」や「行動パターン」は、その後の経営判断にも大きく役立つはずです。
次回は、この顧客ランク分けを実践するための具体的な「顧客データベースの作り方」についてお伝えします。
小規模企業でも実践できる、効果的な情報収集の方法をご紹介します。お楽しみに。