現実的なクラウド活用戦略 ~ハイブリッド運用のすすめ~

皆さんこんにちは。クラウド会計で経営支援を提供する千葉の税理士、中川祐輔です。

毎週木曜日に、経営者なら知っておきたい「業務効率」についての知識を解説しています。

「クラウド化すれば効率が上がる」 「クラウドに移行しないと時代に取り残される」

こんな声を耳にする機会が増えています。確かに、クラウドサービスには革新的な機能が備わっています。

しかし、すべての業務をクラウドに移行することが、本当に正しい選択なのでしょうか。

エアレジのような販売データは、リアルタイムでの確認も、オープンな情報共有も必要です。

一方で、会計や給与計算のデータは、限られた担当者だけがアクセスする方が効率的なケースも多いのです。

様々なクラウドサービスを検証してきた結果、見えてきた一つの答えがあります。

それは、クラウドとローカル、それぞれの良さを活かした「ハイブリッド運用」という選択です。

クラウドサービス導入の落とし手

多くの企業が、「クラウド化=効率化」という図式で考えがちです。

しかし、ある中堅企業では、クラウドERPの導入に100万円以上の初期費用をかけ

月額15万円以上を支払っているにもかかわらず、処理速度が遅すぎて担当者が悲鳴を上げる事態となりました。

結局のところ、経営者が本当に知りたかったのは「いつでも気になった時に業績が見られること」だけだったのです。

このケースでは、既存の会計ソフトとクラウド型の経営管理ツールを組み合わせることで、目的を達成することができました。

クラウド活用の本質を考える

クラウドサービスの特性を正しく理解するには、業務の性質に着目する必要があります。

1. リアルタイム性が求められる業務

  • 販売データの確認
  • 在庫状況の把握
  • スタッフ間の情報共有

このような業務では、クラウドの特性を最大限に活かすことができます。

関係者全員がリアルタイムで情報を共有し、すぐに対応を取ることができるためです。

2. バッチ処理で十分な業務

  • 会計データの処理
  • 給与計算
  • 決算関連の作業

これらの業務は、必ずしもリアルタイムの処理が必要ではありません。

むしろ、特定の担当者がまとめて処理をする方が効率的で、ミスも少なくなります。

現実的な活用戦略

クラウドサービスを効果的に活用するためには、自社の業務を客観的に分析し、

最適な運用方法を選択する必要があります。以下の2つの観点から、慎重に検討を進めていきましょう。

1. 業務の性質を見極める

  • オープンな情報共有が必要か
  • リアルタイム処理が重要か
  • 同時アクセスの必要性

このような分析により、業務ごとに最適なツールを選択することができます。

例えば販売データはクラウドで管理し、会計処理は従来型のソフトで行うといった、合理的な使い分けが可能になります。

2. コストパフォーマンスの検証

  • 初期費用と月額費用の検討
  • 既存システムとの比較
  • 実際の業務効率の予測

コストの検討では、単純な料金比較だけでなく、業務効率の向上による効果も含めて総合的に判断する必要があります。

ある企業では、高額なクラウドERPではなく、既存システムとクラウドサービスの組み合わせで、費用対効果の高いシステム構築に成功しています。

このように分析と検証を重ねることで、自社に最適なハイブリッド運用の形が見えてきます。では、具体的な運用方法について見ていきましょう。

ハイブリッド運用の実践

業務の特性に応じて、クラウドとローカルを使い分けることで、それぞれのメリットを最大限に活かすことができます。

販売管理や会計など、業務の性質に基づいて最適な運用方法を選択していきましょう。

1. クラウドに適した業務

  • リアルタイムでの売上確認が必要な販売管理
  • スタッフ間での情報共有が重要な顧客管理
  • 外出先からのアクセスが必要な案件管理

販売データのように、リアルタイムの確認が必要で、オープンな情報共有が重要な業務では、クラウドの特性を最大限に活かすことができます。

エアレジのような販売管理システムがその典型例です。

2. ローカル運用が効果的な業務

  • まとめて処理する会計業務
  • 担当者を限定した給与計算
  • 大量データを扱う決算作業

会計や給与計算など、まとめて処理ができ、限られた担当者だけがアクセスする業務では、従来型のソフトウェアの方が効率的です。

特に決算期など、大量のデータを処理する際は、ローカル環境の方が快適に作業を進められます。

まとめ:クラウド活用の勘所

クラウドサービスは、確かに革新的な機能を提供してくれます。

しかし、それは目的を達成するための「手段」であって、クラウド化すること自体が「目的」ではありません。

1. 目的の明確化

  • なぜクラウドを導入するのか
  • どんな課題を解決したいのか
  • 期待する効果は何か

業務改善の手段としてクラウドを検討する際は、まず自社の課題を正確に把握することが重要です。

「クラウドありき」の発想ではなく、本当に必要な機能は何かを見極めることから始めましょう。

2. 段階的な導入

  • 小規模な実験から開始
  • 効果の測定と検証
  • 範囲の段階的な拡大

新しいツールの導入は、提案者が徹底的に使いこなしてから、段階的に範囲を広げていくことが成功への近道です。

全員での一斉導入は避け、効果を確認しながら慎重に進めていきましょう。

3. 柔軟な発想

  • クラウドにこだわらない
  • 既存システムとの併用も検討
  • リアルタイム性の必要度を見極める

販売データのように即時性が求められる業務はクラウドで、会計や給与計算のように

まとめて処理できる業務は従来型のソフトでというように、業務の特性に応じた柔軟な使い分けが重要です。

このように、クラウドとローカル、それぞれの良さを活かしたハイブリッド運用こそが、多くの企業にとって現実的な選択となります。

重要なのは、自社の業務に最適な形でITツールを活用していく姿勢です。本シリーズが、皆様の業務改善の一助となれば幸いです。

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