銀行融資の攻略法:なるべく複数の銀行から資金調達を行う

皆さんこんにちは。クラウド会計で経営支援を提供する千葉の税理士、中川祐輔です。

毎週金曜日に、経営者なら知っておきたい「銀行融資」についての知識を解説しています。

近年、中小企業の資金調達において、メインバンクの役割や実態が大きく変化してきています。

特に年商10億円以下の企業にとって、従来型のメインバンク関係は既に崩壊しているとも言えます。

本記事では、現代における実践的な資金調達の考え方と、企業が知っておくべき銀行との付き合い方について解説します。

メインバンクの定義と現状

メインバンクとは何か

銀行取引において、「メインバンク」という言葉は日常的に使用されていますが、その正確な定義を理解している経営者は少ないのが現状です。

メインバンクとは、預金取引と融資取引のそれぞれで51%以上のシェアを持ち、かつ他の取引銀行とは明確に異なる別格の関係性を持つ金融機関を指します。

単に融資残高が最も多いだけでは、真のメインバンクとは言えません。企業の実態を深く理解し、継続的な支援体制を構築できる関係性が必要とされます。

例えば、ある企業の融資残高が3億円で、A銀行が1億円、B銀行が5000万円、C銀行が5000万円、D銀行が1億円という場合を見てみましょう。

最大シェアは33%程度となり、どの銀行も51%以上という基準を満たしていないため、実質的なメインバンクは存在しないことになります。

銀行の主要業務

銀行の基本的な業務は、大きく4つの柱で構成されています。

まず、普通預金や定期預金などの預金業務があります。

次に、企業への資金供給を担う融資業務、そして振込取引を中心とした為替業務があります。

近年では、これらに加えて保険商品の販売や投資商品の運用管理といった預かり資産業務も重要な位置を占めるようになってきました。

現代におけるメインバンク機能の実態

企業規模による対応の違い

メインバンクの機能は、企業の規模によって大きく異なります。年商100億円以上の大規模企業では、人的支援を含む総合的なサポートを期待できます。

具体的には、経理部門への人材派遣や、経営改善に向けた実践的なアドバイスなど、踏み込んだ支援が提供されます。

一方、年商30億円から100億円程度の中規模企業では、ある程度の支援は可能ですが、その内容は限定的となります。

特に深刻な経営課題を抱えた場合でも、人的支援までは期待できない場合が多いのが現状です。

小規模企業の現実

年商10億円以下の企業では、実質的なメインバンク機能は期待できません。

融資判断も厳格化されており、無担保融資の提供も限られています。

メインバンク機能の崩壊要因

現代において、従来型のメインバンク関係が機能しなくなっている主な要因は、銀行の格付制度の厳格化にあります。

この格付制度により、銀行は以前のような柔軟な融資判断が困難になっています。

また、経営支援機能も低下しており、特に中小企業に対する人的支援や経営改善支援の提供は限定的になっています。

実践的な資金調達戦略

複数行取引の重要性

一行への過度な依存を避け、複数の金融機関と取引関係を構築することが重要です。

これにより、資金調達手段の多様化による経営の安定性が向上し、金融機関間の競争原理を活用した有利な条件の確保も可能となります。

取引行の選定基準

地域性、業界知見、融資姿勢などを総合的に評価し、自社に適した金融機関を選定することが重要です。

経営情報の開示と信頼関係の構築

銀行との良好な関係を築くためには、定期的な経営状況の報告と将来計画の共有が不可欠です。

特に、業績が好調な時期から積極的なコミュニケーションを図り、信頼関係を構築しておくことが重要です。

これにより、業績が悪化した際にも、より柔軟な対応を期待することができます。

今後の展望と対策

新しい資金調達手段の検討

従来型の銀行融資に依存しない、新たな資金調達手段の検討も重要です。

日本政策金融公庫などの政府系金融機関の活用や、クラウドファンディング、ファクタリングなど、多様な選択肢を検討する必要があります。

特に、事業の成長段階や資金需要の性質に応じて、最適な調達手段を選択することが求められます。

経営基盤の強化

長期的な資金調達の安定化のためには、財務体質の改善が不可欠です。

自己資本比率の向上や収益性の改善に継続的に取り組むとともに、実現可能性の高い事業計画を策定し、着実に実行していくことが重要です。

財務管理のポイント

キャッシュフロー経営を重視し、運転資金の効率的な管理と適切な設備投資計画の策定が必要です。

まとめ

メインバンク制度は、特に中小企業においては従来の形では既に機能していないと言えます。しかし、これは必ずしもマイナスではありません。

むしろ、複数の金融機関との取引関係を構築し、それぞれの特性を活かした資金調達戦略を展開することで、より安定的な経営基盤を確立することができます。

重要なのは、自社の規模や事業特性に応じた適切な資金調達戦略を構築し、金融機関との関係性を戦略的に管理していくことです。

また、従来型の銀行融資に過度に依存せず、新たな資金調達手段も積極的に検討していく姿勢が求められます。

時代の変化に応じた柔軟な対応と、堅実な経営基盤の構築が、これからの企業の生命線となるでしょう。

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