なぜうちに税務調査が?選ばれる基準とその後の対策について

皆さんこんにちは。クラウド会計で経営支援を提供する千葉の税理士、中川祐輔です。
毎週月曜日に、経営者なら知っておきたい「税務調査」についての知識を解説しています。
税務調査は経営者であれば誰しも一度は気になるテーマですが、「なぜうちが選ばれたのか」という疑問を抱く方も多いのではないでしょうか。
実際、税務調査には特定の“選ばれる基準”が存在し、そこに該当すると調査の可能性が高くなります。
しかし、税務調査は必ずしも“追及”や“糾弾”を目的としたものではなく、正しい税金の申告を促すために行われる公式のプロセスです。
本記事を通して、税務調査の基本的な仕組みと「なぜ自社が選ばれるのか」というポイントをしっかり理解し、調査が入った場合にも落ち着いて対処できるようにしましょう。
税務調査が行われる基準を知る:なぜ自社が選ばれるのか
税務調査の基準は公表されていませんが、一般に以下のような点に該当すると調査が入りやすくなるといわれています。
これらはあくまで傾向ではあるものの、「申告内容が他の事業者と比べて不自然ではないか」を確認するうえで重要な指標となるのです。
- 無申告の状態
- 売上金額の不自然さ
- 所得金額の低さ
- 消費税の申告状況
- 特定の業種(特にネットビジネス)
これらの要因は、税務当局が持つ情報や他の事業者との比較によって「あれ、何かおかしいのではないか」と判断されると調査につながりやすくなる特徴があります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
無申告の影響
確定申告の義務があるにもかかわらず、申告をしないで放置している場合、税務署が介入を行うため、調査の対象となる可能性は非常に高くなります。
税務署としては、まず申告を行ってもらうことが大前提ですから、無申告のまま放置している事業者には優先的にアプローチをかけるのです。
売上金額の不自然さ
税務署は、銀行やクレジットカード会社、取引先からの情報提供など、さまざまなルートで個人や企業の収入を把握しています。
これらのデータと実際の確定申告書の内容が大きく食い違っている場合は、調査の対象となりやすいです。
例えば、取引先が支払調書などで報告している金額と申告書に記載されている売上金額が大幅に異なると、何らかの申告漏れや過小計上を疑われる可能性があります。
所得金額の低さ
個人事業主の場合、売上から経費を引いた最終的な所得で生活を営むことになります。
しかし、売上規模に対してあまりにも所得が低くなると、日常生活が立ち行かないレベルではないかという点から調査対象となることがあります。
過剰な経費計上や収入の一部未申告を疑われやすいのです。
消費税の申告状況
売上金額が1,000万円を超えると消費税の納税義務が発生します。
しかし、毎年800〜900万円程度で推移している場合には、税務当局から「意図的に1,000万円未満に抑えているのではないか」と疑念を抱かれる可能性があります。
実際には単なる業績の変動かもしれませんが、継続的に微妙なラインで推移していると、チェックが入ることがあるのです。
特定の業種への注目
最近は、ネットビジネス(オンラインショップやアフィリエイト、動画配信など)に対する税務調査が増加傾向にあります。
国税庁としても、インターネットを介した新しい形態のビジネスに対応する必要があるため、無申告や売上計上漏れを重点的に調査する方針を打ち出しています。
副業であっても相当な売上があれば、個人での申告義務が発生することがあるため、注意が必要です。
税務調査の目的を正しく理解する
税務調査というと、多くの方が「脱税を疑われている」「不正を摘発されるのではないか」と身構えてしまうかもしれません。
しかし、税務調査の主な目的は必ずしも不正の糾弾だけではありません。以下のような意図で実施されています。
- 確定申告内容の正確性確認
- 無申告者への申告義務の周知・指導
- 税法の正しい適用を広めるための確認
税務当局の立場としては、最終的に「正しく税金を計算し、申告・納税してもらう」ことがゴールです。
したがって、調査の通知が来たとしても過度に怖がる必要はありません。
むしろ、自社の税務処理が適切かどうか客観的に見直すチャンスだと捉えることができます。
重要なのは、普段からしっかりと会計記録を整備し、必要に応じて修正すべき点があれば早めに対応しておくことです。
税務調査への対策:経営者が日頃から取るべき行動
税務調査は突然実施されるように思われるかもしれませんが、日頃からしっかりと準備しておけば、いざというときにも慌てずに対応することができます。
対策を大きく分けると「日常的な管理体制の整備」と「専門家との連携」に集約されます。
それぞれがしっかり機能していれば、仮に税務署から通知があった場合でも落ち着いて対応しやすくなるでしょう。
- 適切な記録管理
会計ソフトや帳簿において、売上や経費の記録を正確に付けることは言うまでもなく重要です。
加えて、領収書や請求書などの証憑書類を一元管理し、必要なときにすぐ取り出せる状態にしておきましょう。
電子データの場合も、バックアップやデータの保存方法に注意を払い、万一のデータ破損や紛失に備えておくと安心です。 - 正確な確定申告
期限内に申告するのはもちろんですが、売上や経費をきちんと計上し、間違いがないようダブルチェックすることが大切です。
特に大きな経費が発生したり、前年と大きく数字が変動したりするケースでは、根拠をメモや注記でまとめておくと、調査官への説明がスムーズになります。 - 税法の理解と遵守
税法は改正が頻繁に行われるため、常に最新の情報を把握しておく必要があります。
業種によっては、特殊な扱いが必要な売上や経費があるため、自分の事業に関係する税制をよく理解することが大切です。
分からない点は専門家(税理士など)に相談することでリスクを軽減できます。 - 内部統制の強化
経理担当者や事業部門がそれぞれ独立して処理を進めていると、重大なミスが見落とされる可能性があります。
経営者としては、定期的に会計帳簿や取引をチェックしたり、必要に応じて内部監査を行ったりするなど、ミスや不正を未然に防ぐ仕組みを整備しましょう。
従業員に対しても税務に関するコンプライアンス教育を行い、全社的に“税法を守る文化”を浸透させることが望ましいです。 - 専門家の活用
税理士や公認会計士と顧問契約を結ぶなど、専門家のサポートを受けながら経理処理を進めると、税務リスクを大幅に減らすことができます。
複雑な取引や判断が難しい場合は、早めに専門家と相談し、最適な処理方法を検討しましょう。
調査時には税理士などが立ち会うことで、税務署とのやり取りをスムーズに進められることも少なくありません。
税務調査の通知が来たら:具体的な対応方法
いくら日頃の準備を徹底していても、通知が届いた瞬間は動揺してしまうかもしれません。
しかし、ここでパニックにならずに、冷静に次の手順を踏むことが大切です。
- まずは冷静に対応する
通知が来たら、最初に社内関係者と情報を共有し、対応チームを編成するなど落ち着いた態勢を整えましょう。
焦って中途半端な対応をしてしまうと、必要な書類を取りこぼしたり、誤った説明をしてしまったりする可能性があります。 - 準備を整える
税務署から要求された資料や関連書類を整理し、すぐに提示できるようにしましょう。
過去の取引で判断に迷った点や特殊な経費などがあれば、その根拠となる契約書や領収書を確認しておきます。
こうした準備は時間がかかることもあるので、早めに取り掛かるのがポイントです。 - 誠実に対応する
税務調査では、調査官の質問に対して隠し立てせず正直に回答することが求められますので、虚偽の説明や証拠書類の隠蔽は絶対に避けましょう。
分からないことを聞かれた場合は「すぐにお答えできないので、後日書類とともにご説明します」と誠実に対応することで、信頼関係を崩さずに済みます。 - 専門家のサポートを受ける
調査に不安を感じる場合は、税理士や弁護士などに相談し、立ち会いを依頼するとスムーズです。
税理士は税務署とのやり取りに慣れており、論点となりそうな項目を事前に把握して対策を立てることが可能です。 - 結果を適切に処理する
調査の結果、指摘を受けた場合は素直に受け止め、再発防止策を検討することが大切です。追徴税額が発生したら、速やかに納付しましょう。
また、指摘事項を社内で共有し、経理や会計処理の改善に活かすことで、今後の税務リスクを減らすことができます。
まとめ:税務調査は改善のチャンス
税務調査は経営者にとって避けては通れない可能性のあるプロセスです。しかし、その実態を理解しておくことで必要以上に恐れる必要はありません。
むしろ、普段から正確な記録管理と申告、税法の遵守に努めることで、調査が入っても落ち着いて対応できるようになります。
そして、調査を通じて明らかになった課題を改善することは、会社の財務健全性や信頼性を高める絶好の機会ともいえるでしょう。
もし不安がある場合には、早めに税理士などの専門家に相談し、リスクを最小限に抑えつつ、自社の経営をより強固なものにするための足がかりにしていただければと思います。
この記事で解説した税務調査の基準と対策を活用し、日頃から万全の準備を行うことで、自信をもって事業を継続していただければ幸いです。
税務調査というイベントを「会社の状態を見直し、さらなる成長に向けた改善を行うチャンス」と捉え、今後の経営に役立てていただければと思います。