銀行融資の攻略法:資金調達の基礎となる「返済財源」について
皆さんこんにちは。クラウド会計で経営支援を提供する千葉の税理士、中川祐輔です。
毎週金曜日に、経営者なら知っておきたい「銀行融資」についての知識を解説しています。
今回は、銀行が重視する「返済財源」について詳しく解説し、効果的な資金調達の方法を探ります。
返済財源とは
返済財源とは、借入金を返済するための資金の源泉を指します。
銀行は融資を行う際、この返済財源を重要視します。
なぜなら、銀行の主な役割はリスクを最小限に抑えることだからです。
銀行は融資を行う際、企業の規模によって異なるアプローチを取ります。
大企業の場合、無担保融資が可能な場合もあり、100億円規模の融資も珍しくありません。
一方、中小企業、特に年商30億円以下の企業では、約95%が担保付き融資となります。
主な担保の種類には、不動産担保、保証協会、連帯保証人、定期預金(会社または社長個人)などがあります。
これらの担保は、銀行にとってリスク軽減の手段となります。
融資の種類と返済財源の見方
融資の種類や借入期間によって、銀行の返済財源の見方が異なります。
これを理解することは、効果的な資金調達戦略を立てる上で非常に重要です。
短期融資(1年以内)の場合
短期融資の場合、返済財源は主に売上高から見込まれます。
これは、運転資金として使用されることが多いためです。
銀行は、企業の売上高の推移と今後の見通しを重視します。
経営者の皆様は、月別の売上計画を具体的に示すことが重要です。
過去の実績に基づいた現実的な計画を立て、それを達成するための戦略も併せて説明できると、銀行の信頼を得やすくなります。
長期融資(1年超)の場合
長期融資の返済財源は、主にフリーキャッシュフローから見込まれます。
フリーキャッシュフローは、一般的に「経常利益 + 減価償却費 – 法人税」で計算されます。
この指標は、企業が事業活動から生み出す自由に使える資金を示すため、長期的な返済能力を判断する上で重要です。
経営者の皆様は、この指標を改善するための事業計画を立て、それを銀行に明確に説明することが求められます。
銀行の融資審査の視点
銀行は主に3つの軸、すなわち過去、現在、将来の視点から融資審査を行います。
この中で、現在の状況を示す重要な資料が月次決算(試算表)です。
理想的には、翌月5日〜10日までに月次決算を提出できることが望ましいです。
これにより、銀行は企業の最新の財務状況を把握でき、より適切な判断を下すことができます。
効果的な説明方法として、以下の点に注意しましょう:
- 月次決算を適時に提出する
- 現在の状況から将来の着地点を具体的に説明する
- 過去からの業績の連続性を示す
これらの点を押さえることで、銀行に対して自社の財務状況と将来性を明確に伝えることができます。
融資の種類別説明方法
運転資金(短期借入)
運転資金の場合、返済財源は主に売上高から見込まれます。
経営者の皆様は、月別の売上計画を具体的に示すことが重要です。
その際、季節変動や業界トレンドなども考慮に入れ、現実的かつ詳細な計画を立てましょう。
また、売上高だけでなく、利益率の改善計画や経費削減の取り組みなども併せて説明できると、より説得力が増します。
設備資金(長期借入)
設備資金の場合、返済期間の目安は購入物件の原価償却期間内となります。
一般的な上限は、木造で20年程度、軽量鉄骨・重量鉄骨で25年程度、鉄筋コンクリートで最大30年程度です。
説明のポイントは以下の2点です:
- 設備投資の効果を加味した損益計算書の作成
- 返済期間(通常5〜10年)内の税金見込みの説明
特に、新規設備投資がどのように売上や利益に貢献するかを具体的な数字で示すことが重要です。
投資の回収期間や投資利益率(ROI)なども併せて説明できると、銀行の理解を得やすくなります。
長期融資(1年超)
長期融資の返済財源は主にキャッシュフローから見込まれます。
計算方法は「経常利益 + 減価償却費 – 法人税」です。
説明のポイントは、新規設備投資の効果を具体的に示すことです。
単に数字を並べるだけでなく、その投資がどのように事業の成長や競争力強化につながるかを説明することが重要です。
また、長期的な事業計画や市場分析、競合他社との比較なども併せて提示できると、より説得力のある説明となります。
効果的な資金調達のためのポイント
効果的な資金調達を行うためには、適切な融資の選択が重要です。
運転資金には短期融資、設備投資には長期融資を活用するなど、目的に応じた融資を選ぶことで、返済負担を適切に管理できます。
返済財源の明確化も重要です。銀行に対して、現在の財務状況、将来の事業計画と売上予測、設備投資の場合は投資効果の具体的な数値を明確に説明できるよう準備しましょう。
また、銀行融資だけでなく、状況に応じて他の調達手段も検討することをおすすめします。
リース、クラウドファンディング、補助金・助成金の活用など、複数の手段を組み合わせることで、より柔軟な資金調達が可能になります。
経営の透明性向上も重要なポイントです。適時の月次決算作成、会計事務所との連携強化、経営計画の継続的な更新と共有などに努めることで、銀行との信頼関係を築くことができます。
銀行との良好な関係構築
銀行との良好な関係構築は、長期的な企業成長にとって非常に重要です。
定期的なコミュニケーション、経営課題の相談、将来の成長戦略の説明などを通じて、銀行との対話を継続的に行いましょう。
信頼関係の構築も重要です。約束した返済を確実に履行し、経営の透明性を維持し、課題発生時には早期に相談するなど、誠実な対応を心がけましょう。
これにより、困難な時期にも支援を得られる可能性が高まります。
まとめ
銀行融資を成功させるためには、返済財源の理解と適切な説明が不可欠です。
融資の種類に応じた返済財源の考え方を押さえ、自社の財務状況と将来計画を明確に示すことで、効果的な資金調達が可能になります。
また、銀行融資に頼りすぎず、他の資金調達手段も組み合わせることで、より安定した経営基盤を築くことができます。
経営者の皆様は、これらの点を意識しながら、自社の成長戦略に合った最適な資金調達方法を選択してください。
銀行融資は、単なる資金調達の手段ではなく、企業の成長と安定を支える重要なパートナーシップの一環であることを忘れずに、戦略的に活用していきましょう。
適切な返済財源の管理と説明、そして銀行との良好な関係構築によって、より強固な財務基盤を築き、事業の持続的な成長を実現することができるのです。