スケジュール管理の極意 – 繁閑差を活かした戦略的な時間活用法
皆さんこんにちは。クラウド会計で経営支援を提供する千葉の税理士、中川祐輔です。
毎週木曜日に、経営者なら知っておきたい「業務効率」についての知識を解説しています。
私は税理士として100社以上の経営者と関わってきましたが、多くの経営者が「時間」という経営資源の活用に悩みを抱えています。
「繁忙期は人手が足りず、閑散期は余剰感がある」 「急な依頼に対応しきれない」 「やるべきことは分かっているのに、時間が作れない」
こんな悩みを抱える経営者は少なくありません。しかし、実は「時間」は意外とコントロール可能な経営資源なのです。
なぜなら、多くの会社では「パーキンソンの法則」により、必要以上に時間を消費してしまっているからです。
今回は、この法則を逆手に取り、Googleカレンダーを活用した戦略的な時間管理の方法をご紹介します。
戦略的な時間管理とは
スケジュール管理というと、「いかに予定を詰め込むか」と考えがちです。しかし、それでは本質的な解決にはなりません。
真の時間管理とは、限られた時間をいかに戦略的に使うかということです。
特に重要なのが、「前倒し」の発想です。例えば、私の事務所では、次の繁忙期の準備を3ヶ月前から始めています。
一般的な「期日から逆算する」方式では、突発的な事態が発生した際に対応の余地がありません。
前倒しで準備することで、品質を保ちながら、柔軟な対応が可能になります。
パーキンソンの法則との向き合い方
「仕事は与えられた時間いっぱいまで膨張する」というパーキンソンの法則。これは特に閑散期に顕著に現れます。
ある建設会社の例では、閑散期に新たな業務プロセスを導入したものの、それが繁忙期の負担増につながってしまったケースがありました。
この法則と上手く付き合うために、以下のポイントを意識しましょう。
- 期限に余裕がある時こそ、明確な締切を設定
- 作業時間の目安を事前に設定
- 余剰時間は戦略的な施策に充てる
Googleカレンダーを活用した時間管理
Googleカレンダーは単なるスケジュール帳ではありません。戦略的な時間管理を実現するための強力なツールとなります。
予定の入れ方を変える
多くの人は予定をそのまま入れがちですが、それでは実際の所要時間との間にズレが生じます。
例えば、「14時から商談」という予定を入れただけでは、実際には移動時間や準備時間が考慮されていません。
以下のような入れ方を意識してください:
期日:○○様 ミーティング @オフィス 14:00
移動時間:13:30-14:00 移動
準備時間:13:00-13:30 資料確認
このように関連する時間まで含めて入れることで、より現実的なスケジュール管理が可能になります。
仮予定の活用
もう一つの重要なポイントが、仮予定の活用です。
当事務所では、仮予定の際は予定名の前に「?」を付けています。
例えば:
?田中様 決算打ち合わせ
このように入れることで:
- 仮予定と確定予定の区別が明確に
- 予定の重複を避けられる
- バッファー時間の確保が容易に
なります。
色分けによる視覚化
私は以下のような色分けを行っています:
緑:クライアントとの約束(相手と調整しないと動かせない)
赤:社内作業(自分だけで調整可能)
青:移動時間(効率化の余地あり)
この色分けにより:
- 予定の性質が一目で分かる
- 調整可能な時間が明確になる
- チーム内での共有がしやすくなる
という効果が得られています。
戦略的な時間確保のアプローチ
時間管理で重要なのは、「戦略的な時間」を意識的に確保することです。
多くの経営者は目の前の業務に追われ、戦略を考える時間を確保できていません。
戦略的な時間枠の設定
私の場合、平日の午前中はアポイントを入れない時間として確保しています。この時間を以下のような戦略的な業務に充てています:
- マーケティング戦略の立案
- 業務効率化の検討
- 市場調査や情報収集
- 新規サービスの企画
そして午後からクライアントのアポイントを入れることで、商談や相談業務に集中できる体制を作っています。
このように時間を明確に区分けすることで、各業務に集中して取り組むことができます。
特に、午前中を戦略的な業務に確保することで、事業の成長に必要な「考える時間」が確実に確保できるようになりました。
以前は「時間があるときに考えよう」と思っていたものの、実際には「時間がある時」は訪れませんでした。
時間は意識的に作るもの。この気づきが、業務効率と事業成長の両立につながっています。
タスク管理との連携
スケジュール管理をより効果的にするには、タスク管理との連携が欠かせません。
以下に、私が実践している手法をご紹介します。
Googleスプレッドシートによる一元管理
以下の項目を記録・管理することで、より戦略的な時間配分が可能になります:
年間データベースの項目:
- 顧客名
- タスク内容
- 予定作業時間
- 実績時間
- 進捗状況
このデータは来年度の予定を立てる際の重要な判断材料となります。
例えば、実績時間の分析により、より正確な見積もりが可能になります。
30分ルールの導入
30分以上かかりそうなタスクは、その場での処理を避け、必ずカレンダーに時間を確保します。
具体的には:
- タスクを受けた時点で概算時間を判断
- 30分以上かかりそうな場合は一旦タスクに登録
- カレンダーに作業時間を確保
- 依頼者に着手予定時期を連絡
このルールにより、重要な業務に集中する時間を確保しながら、確実なフォローアップが可能になります。
まとめ:戦略的な時間管理がもたらすもの
時間管理の本質は、単なる予定の管理ではありません。
それは経営資源としての「時間」を最大限活用し、事業の成長につなげることです。
前倒しの発想、戦略的な閑散期の活用、そして適切なツールの活用。
これらを組み合わせることで、真の意味での生産性向上が実現できます。
次回は「第4回:チェックリストとマニュアルの作り方 – 組織の平均点を上げる仕組み作り」として、業務の標準化と品質向上について解説していきます。