税務調査の不安を払拭!調査理由の問い方で差がつく実践テクニック

皆さんこんにちは。クラウド会計で経営支援を提供する千葉の税理士、中川祐輔です。

毎週月曜日に、経営者なら知っておきたい「税務調査」についての知識を解説しています。

確定申告を終えた後、多くの経営者が抱く不安の一つとして「税務調査」が挙げられます。

特に、調査通知が届いたときには「なぜ自社が対象になったのか」「どんな内容を確認されるのか」といった疑問が次々と浮かび上がるのではないでしょうか。

この記事では、税務調査に対する素朴な疑問から、調査理由・目的の尋ね方までをわかりやすく解説します。

特に「調査の理由は問いただしたほうがいいのか」という点について、一般税務調査・無予告調査・反面調査それぞれの場合での実務的な対処法をまとめています。

正しい知識を身につけることで、税務調査は恐れるだけでなく、むしろ自社の適正な処理を証明する機会ともなり得ることを理解していただけるでしょう。

税務調査とは何か

1. 税務調査の目的

税務調査は、国税当局が納税者の申告内容を確認し、法令に基づいて適正な課税が行われているかどうかを検証するために実施されます。

根拠となるのは国税通則法第74条の2で、「調査について必要があるときは」という要件に基づき、実地調査が行われるしくみになっています。

この「必要があるとき」という要件には幅があり、申告内容に疑問がある場合だけでなく、無作為抽出の調査もあり得ます。

したがって、企業規模や業種を問わず、税務調査が実施される可能性は常にあるといってよいでしょう。

2. 事前通知の有無が生む違い

税務調査には「事前に通知が行われる場合(一般税務調査)」と「無予告で調査官が訪問してくる場合(無予告調査)」があります。

通常は事前通知があるのが基本ですが、脱税の疑いが強い場合や証拠隠滅のリスクがある場合などには無予告調査が選択されることもあるのです。

また、調査対象の企業だけでなく、取引先など関係の深い第三者に対して行われる「反面調査」という手法も存在します。

調査通知を受けた際の素朴な疑問

税務調査の事前通知を受け取った経営者の多くがまず抱くのは、「なぜ私たちの会社が対象なのか?」という疑問です。

法的には、国税通則法第74条の9で事前通知すべき項目として「調査の目的」が挙げられていますが、この“目的”は一般に「申告された所得や税額に誤りがないかを確認するため」といった形式的な説明にとどまります。

したがって、具体的に「どんな選定基準でうちが選ばれたのか?」をたずねても、調査官からは明確な回答を得ることはまず期待できません。

一般税務調査における「理由」の問い方

1. 一般税務調査の実情

事前通知がある場合でも、「なぜうちの会社に来るのか」という疑問が湧くのは自然なことです。

しかし、国税庁が公表しているFAQにおいても、調査の目的を通知する義務はあるものの、実際の調査理由を詳細に説明する義務まではないことが明記されています。

FAQ引用(国税庁)
問18 事前通知の際には、なぜ実地の調査が必要なのかについても説明してもらえるのですか。
(答) 法令上、調査の目的(例えば、提出された申告書の記載内容を確認するため)については事前通知すべきこととされていますが、実地の調査を行う理由については、法令上事前通知すべき事項とはされていませんので、これを説明することはありません。

このように、「目的は言うが理由は言わない」というのが実務上の現状です。

経営者としては「理由を聞いても具体的には答えてもらえない」という点をあらかじめ理解しておく必要があります。

2. 一般税務調査におけるスタンス

一般税務調査では、理由を問うよりも「事前通知があるうちに必要な資料をそろえ、意図せぬ誤りがないか再確認する」ことに力を注ぐほうが現実的です。

税務署からの通知内容や指定された日時、必要とされる書類などを再確認し、落ち着いて対応の準備をしましょう。

無予告調査で理由を問うことの意義

一方で、無予告調査となると話は変わってきます。

同じく国税庁FAQの問21では、無予告調査についても「理由の説明義務はない」とする一文がありますが、実務上は理由を問いただす意義が大きいと考えられています。

では、無予告調査で理由をたずねることに、どのような意味があるのでしょうか。以下では、その主な意義を解説します。

  1. プロフェッショナルとしての姿勢を示す
    調査官は、税理士や経営者が法的根拠を理解しているかどうかを常に見ています。言われるがままに調査を受けるのではなく、「どの法律のどの規定に基づいて無予告調査を行うのか」「なぜ事前通知がなかったのか」などを確認すると、調査官側も不当な手続きを取りにくくなり、その後の調査が適正に進みやすくなります。
  2. 情報収集の機会になる
    守秘義務の範囲内であっても、調査官が何かしらのヒントをくれる可能性があるのが実務の世界です。たとえば「取引先の情報を確認する必要があるので」「入金記録の一部が確認できていないので」といった言及があれば、そこから自社がどのような点を疑われているかを推測できます。結果的に違法な調査であるとわかった場合は、納税者の権利を守る根拠にもなります。
  3. 受忍義務の判断材料となる
    無予告調査には法的要件があり、これを満たさない調査は違法とみなされる可能性があります。その場合、納税者が調査に協力する義務(受忍義務)は存在しません。理由を問い続けることにより、調査の適法性を判断する材料を得ることができるのです。

このように無予告調査の場合、理由を問い合わせる行為には大きな意味があります。私も無予告調査の場合は、きちんと理由をたずねるようにしています。

たとえ詳細な回答が得られなくても、その姿勢を示すことで税務当局に対して「正当な根拠を理解している納税者」という印象を与えられ、不要な混乱や不利な扱いを避けられる可能性が高まるのです。

反面調査の「必要性」を問う重要性

1. 反面調査とは

税務調査には「反面調査」という手法があります。

これは、調査対象となる企業(納税者)だけでなく、取引先や関連業者などの第三者に対して行われる調査です。

反面調査の実施基準も国税通則法第74条の2に基づき、「調査について必要があるとき」という要件を満たす必要があります。

2. 反面調査の必要性に疑問がある場合

本来、反面調査は「本人調査だけでは十分な資料が得られない」あるいは「本人が提示する資料に疑義がある」など、通常の調査では不十分な状況下で行われるべき手続きです。

しかし実務上、税務署側が安易に反面調査を行うケースもゼロではありません。

たとえば、被調査者が正しくすべての資料を提示しているにもかかわらず、念のために取引先にも確認するといった形で実施される場合があります。

こうしたときには、反面調査を行うだけの十分な理由(必要性)があるかどうかを問いただすことが重要です。

理由が曖昧なまま「念のため」と称して反面調査を続けられると、取引先との信頼関係を損ねる可能性があるなど、企業にとって大きなリスクとなり得ます。

実務上の対応戦略

1. 反面調査を止めるための方策

租税法の権威である金子宏教授は、反面調査について「本人調査によって十分な資料が取得できないなど、特に必要な場合のみ認められる」との解釈を示しています。

つまり、本人が資料を完全に開示しているのに反面調査を強行されるのは、本来の法の趣旨に反するといえます。

もし不当な反面調査が行われ、取引先との関係が毀損するなどの実害が生じた場合には、国家賠償法に基づく損害賠償請求を検討する余地もあります。

ただし、実害を立証するハードルは高いため、まずは調査段階で「必要性を満たしているのか」を問いただし、不当な反面調査を行わせないようにすることが最善策です。

2. 事前の備えでリスクを減らす

税務調査全般にいえることですが、事前にしっかりと経理体制を整え、証憑書類の保管・整理を徹底しておくことで、調査に対する不安を大きく軽減できます。

とりわけ、取引先とのやり取りや契約書などの文書管理を明確にしておけば、反面調査をされる前に「こちらで十分な資料を用意しています」と説明できる余地が広がります。

調査の理由・目的を問う意義のまとめ

ここまでの内容を整理すると、調査の理由や目的を尋ねることには以下のような意味があります。

  • 一般の(事前通知がある)税務調査
    • 理由を訊いても形式的な回答しか得られず、実質的な意味はあまりない
    • その代わり事前準備をしっかり行うことが重要
  • 無予告調査
    • 明確な理由が示されなくても問い続ける意義が大きい
    • 納税者としての姿勢を示し、調査官の行動を正当化させる過程で情報が得られる
    • 調査の適法性を見極める判断材料となる
  • 反面調査
    • 「必要性」を具体的に追及すべき
    • 不当な調査による取引先との関係悪化や損害を防ぐための手段となる

調査官がすべての理由や根拠を詳細に開示する義務を負わないとしても、問いかけることで「自社は法的根拠をしっかり理解している」という姿勢を示せること自体に意義があります。

まとめ—備えあれば憂いなし

税務調査は、中小企業であっても例外なく起こり得るものです。

しかし、事前に経理体制や書類の整理を万全にし、税理士と連携したうえで調査対応のポイントを理解しておけば、恐れる必要はありません。

特に、無予告調査や反面調査といった特殊なケースにおいては、単に調査を受け入れるだけでなく、法的要件が満たされているかを確認し、場合によっては調査の理由・必要性を問いただすことが、納税者の権利を守るうえで大きな意味を持ちます。

もし調査で疑問や不安を感じることがあれば、早めに税理士や専門家に相談し、適正な対応をとるようにしましょう。

正しい知識を身につけ、自信をもって対処する姿勢こそが、調査官に好印象を与え、ひいては調査結果やその後の経営にもプラスに働きます。

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