小規模企業共済で実現する”究極の節税対策”と資産形成法

皆さんこんにちは。クラウド会計で経営支援を提供する千葉の税理士、中川祐輔です。
毎週水曜日に、経営者なら知っておきたい「節税対策」についての知識を解説しています。
「税金を少しでも減らしたい」「将来のための資産も確保したい」という思いは、多くの中小企業経営者が抱える共通の悩みではないでしょうか。
日々の経営に追われる中、従業員の少ない企業が活用できる節税制度は限られていると思われがちですが、実際にはまだあまり知られていない強力な制度が存在します。
それが「小規模企業共済」です。小規模企業共済というと、単なる退職金制度のイメージを持たれることも多いかもしれません。
しかし、この制度は正しく活用すれば、節税だけでなく低金利での資金調達や資産形成にも活かせる、大変有用な仕組みです。
ここでは、小規模企業共済を利用した場合の具体的な節税効果や貸付制度の活用法、導入のステップなどを、事例を交えながらわかりやすく解説します。
所得300万円から2,000万円の経営者を例に、10年間で最大420万円の節税、さらには年利5%以上の運用益が期待できる可能性についても触れていきますので、最後までぜひお読みください。
小規模企業共済とは?基本の仕組みを理解する
はじめに、小規模企業共済の基本的な仕組みを改めて確認しましょう。
小規模企業共済は、中小企業や個人事業主向けの公的な退職金制度です。
国が設立した中小企業基盤整備機構(以下、中小機構)が管理・運営しており、毎月の掛金を積み立てることで、将来事業をやめたタイミングに退職金として受け取れるようになっています。
小規模企業共済の加入資格
この制度に加入できるのは、一定の条件を満たした中小企業の経営者や個人事業主です。
具体的には、以下のような方々が対象になります。
- 個人事業主
- 会社や企業組合の役員
- 共同経営者
- 小規模企業者(従業員数が業種によって20人以下、または50人以下)
これらの条件に合致していれば、会社の規模がその後拡大しても加入資格を失うことはありません。
一度加入してしまえば、将来的に企業が成長しても同じ制度を継続して利用できるのは、長期的な視点で資産を形成したい経営者にとって非常に魅力的です。
掛金と受取りの基本
次に、具体的な掛金の設定と受取りについて見てみましょう。
小規模企業共済では、毎月1,000円から70,000円まで、500円刻みで自由に掛金を設定できます。
途中で増減額も可能なので、業績やキャッシュフローに合わせて柔軟に対応しやすい点が特徴です。
たとえば、最大限の節税効果を狙うために月70,000円(年間84万円)で加入するとしましょう。
積み立てた掛金には約1%程度の利息がつきますので、長期間積み立てれば元本以上の金額を受け取ることが可能です。
たとえば10年積み立てを続ければ、退職時には約900万円を受け取れる試算になります。
驚くべき節税効果の実態
小規模企業共済の大きなメリットのひとつは、掛金全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除の対象になることです。
銀行預金や一般的な積立と違い、毎月の掛金がまるごと控除されるため、所得税・住民税の両面で大きな節税が期待できます。
所得別の節税効果シミュレーション
ここでは、年間84万円(月7万円)の掛金を想定し、所得が異なる4つのケースを取り上げます。
具体的な数値例を挙げると、次のようになります。
- 所得300万円の場合
年間約16.9万円の節税(掛金の約20.2%相当) - 所得600万円の場合
年間約25.5万円の節税(掛金の約30.4%相当) - 所得1,000万円の場合
年間約36.7万円の節税(掛金の約43.7%相当) - 所得2,000万円の場合
年間約42万円の節税(掛金の約50%相当)
このように、所得が増えるほど節税効果の割合も大きくなります。
これは累進課税制度が採用されているため、所得が高い方ほど税率が高くなり、同じ控除額でも税金を減らせる幅が大きくなるからです。
たとえば所得2,000万円の方の場合、実質的に月7万円掛金の半分(約42万円)が年間で節税される計算になります。
金利がごくわずかしかつかない銀行預金と比べると、いかに小規模企業共済の節税効果が魅力的かがお分かりいただけるでしょう。
退職時の税金はどうなる?
「積立時に節税しても、受取時に税金がかかるなら意味がないのでは?」と思う方もいるかもしれません。
確かに、小規模企業共済の退職金には課税が生じますが、退職所得控除という優遇制度が適用されるため、実質の税負担はかなり抑えられます。
たとえば10年間で月7万円ずつ積み立て、退職時に900万円を受け取るケースを考えてみましょう。
- 退職所得控除として、年数×40万円が差し引かれる(10年の場合は40万円×10=400万円)。
- 控除後の金額(900万円–400万円=500万円)の半分のみが課税対象になる(500万円÷2=250万円)。
- 残りの250万円に対して所得税・住民税(約20%程度)がかかり、約50万円の納税額となる。
結果として、900万円のうち約50万円しか税金がかかりません。つまり実質税率は約5.5%にとどまるのです。
先ほど所得2,000万円の例で試算したように、10年間で42万円×10=約420万円を節税できるなら、退職時に50万円程度納税しても差引きで370万円ほど得をする計算になります。
積立時と受取時の両方で優遇がある小規模企業共済は、単なる「貯蓄」や「一般的な退職金制度」の枠を超えた強力な節税制度といえるでしょう。
知られざる活用法:貸付制度と資産運用
小規模企業共済には、さらに注目すべき「貸付制度」があります。
これは単に節税だけでなく、事業資金の調達や資産運用の手段としても活用できる仕組みです。
貸付制度の仕組み
貸付制度を利用すると、加入者は積み立てた掛金の7割から9割程度を借り入れ可能です。
加入期間によって借入割合が変動し、約11年目までは掛金総額の7割、その後は8割、9割と借入上限が増えます。
たとえば、年間84万円を10年積み立てた場合の合計は840万円ですが、加入期間が10年に達すると掛金の8割にあたる672万円を低金利で借りられます。
一般的な金融機関の融資金利と比べると、年1.5%と非常に有利な条件です。
なお、小規模企業共済の説明書や資料に「年利14.6%」と表記されていることがありますが、これは返済が滞った場合の延滞利率を示すものです。
通常の借入時には1.5%程度の低金利で利用できますので、そこは誤解のないようにしましょう。
借り入れの返済と更新
借り入れた資金の返済期間は契約時に設定しますが、返済期限が到来したときに一括返済する必要はありません。
所定の手続きを行えば借り換えが可能で、退職するまでお金を借り続けることもできるのです。
さらに、事業が順調で毎年掛金を拠出していけば、その分借入可能額も増える仕組みです。
10年間継続しただけでも数百万円単位で低金利の資金を確保できることになるため、事業資金の手当てや急な出費への備えとして、大いに活用価値があります。
なお、最終的に退職を迎えたときは、受け取る退職金から借入金を差し引いて清算されます。
このときも「退職所得の計算」はあくまで借入前の満額で計算するため、退職金の税制優遇は損なわれません。
貸し付けを利用していても節税メリットが減ることはないのです。
借入金の資産運用という選択肢
借り入れた資金を事業目的で使うのはもちろん有効ですが、さらに一歩進んだ活用方法として「運用資金に回す」手もあります。
たとえば年1.5%の利息で借りられた672万円を、年利6.5%を目安とする投資信託などで運用すれば、理論上は差し引きで5.0%程度のリターンが期待できます。
もちろん投資にはリスクが伴うため、誰にでも推奨できるわけではありませんが、長期・分散投資の考え方を取り入れることで安定的に運用を行うことは可能です。
小規模企業共済の貸付制度を活用しながら資金を増やせる可能性がある、という点は多くの経営者がまだ気づいていない魅力だといえます。
小規模企業共済の導入ステップ
では、実際に小規模企業共済を始めるにはどうすればよいのでしょうか。
導入は意外とシンプルで、以下のような流れで進められます。
加入手続きの流れ
- 加入申込書の入手
中小機構のウェブサイトからダウンロードするか、商工会や商工会議所、金融機関(委託機関)などで書類を受け取ります。 - 必要書類の準備
申込書のほか、事業実態を証明する確定申告書の写しや本人確認書類などが必要です。 - 申込書の提出
記入済みの申込書と必要書類を委託機関に提出します。 - 審査と契約成立
審査完了後、契約が成立すれば掛金の納付がスタートします。
初めての方でも、委託機関や中小機構のサポートがあるため安心して申し込めるでしょう。
近年ではオンライン申請も進んでおり、手続きがさらに簡単になっています。
効果的な掛金設定のポイント
小規模企業共済の最大のメリットは、積み立てた分だけ全額が所得控除になる点です。
そのため、節税効果を重視するなら月70,000円の上限いっぱいまで掛金を設定するのが望ましいでしょう。
ただし、経営状況や資金繰りを考慮し、無理のない範囲から始めるのもひとつの方法です。
また、増額や減額が随時可能なので、業績好調な年には掛金を増やし、厳しい時期には減額するといった調整ができます。
事業の浮き沈みに合わせ、資金繰りを圧迫しない範囲で最大の効果を狙いましょう。
他の制度との併用
小規模企業共済は、iDeCo(個人型確定拠出年金)や経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)など、他の制度とも併用できます。
それぞれの制度が持つ特性を理解して組み合わせれば、さらに効果的に節税や将来の資産形成を図ることが可能です。
特に経営セーフティ共済は、取引先の倒産に備えて活用する制度ですが、こちらも掛金が全額損金や必要経費として認められます。
小規模企業共済と合わせて導入することで、リスク対策と節税の両面に貢献するでしょう。
まとめ:経営者の資産形成を変える小規模企業共済
小規模企業共済は、中小企業の経営者や個人事業主にとって非常に心強い制度です。
月7万円の掛金を10年続ければ最大420万円もの節税が見込めるうえ、退職時には税制優遇を受けつつ900万円前後を受け取れる可能性があります。
さらに、低金利での貸付制度を活用すれば、必要なときに資金を引き出せるだけでなく、その資金を運用に回すことで利ざやを得る選択肢も生まれます。
この制度を最大限に活用するためには、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 上限額である月70,000円に近い掛金を設定することで、最大の節税効果を狙う。
無理をしすぎない範囲で掛金を高めに設定することが、結果的には大きな控除額につながり、税負担を大幅に軽減できます。 - 貸付制度を活用して低金利で資金調達し、事業や投資に役立てる。
入金と出金が自由になるわけではありませんが、更新手続きをすることで長期的に借り続けることも可能です。 - 借り入れた資金を資産運用に回すという応用的な手法を検討する。
投資知識やリスク許容度が必要ですが、利率差を活用して資産を増やせる場合があります。 - 他の制度(iDeCo、経営セーフティ共済など)とも併用し、節税の幅を広げる。
制度ごとに控除枠や運用方法が異なるため、合わせ技で効果を最大化しやすくなります。
このように、小規模企業共済は「節税」「退職金」「資金調達」「資産運用」という複数の要素を一度に満たすポテンシャルを備えています。
ただし、特に資産運用についてはリスク管理が欠かせないため、税理士やファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談して判断することをおすすめします。
知っているだけではなく、実際に活用することで真価を発揮するのが小規模企業共済の大きな特長です。
ぜひ本記事の内容を参考に、あなたの事業や個人資産の未来をより豊かにするための一歩を踏み出してみてください。